私は橋から飛び降りた

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「B社はこれからイベントの企画が始まるので、まずは情報収集をしたいと思います」 「も〜、高橋さぁん、企画が始まるからこっちから提案すべきでしょ〜。本当使えな〜い。何でB社の担当高橋さんなんだろうねぇ。売上0になったらどうするんだろう。私がサポートとか本当負担大きすぎ!」 「すみません……」 前回係長と若狭さんの3人で打ち合わせした時に情報収集とメモをしていたし、係長の言葉も覚えている。だが、私が理解を誤ってしまっている可能性もある。 その後も私は、若狭さんと2人で会議室に籠って戦略を考えた。翌日、間もなく臨月に差し掛かる係長に今後の戦略などを話した。 「うーん、そうだね。いいとは思うけど、まずは先方がどんな方向なのか、どんな企画がありそうなのか情報を収集してそれに合う物や新しいアイディアを出した方がいいと思うよ」 「そうですよねぇ〜。そう思ってたんですぅ」 ……。 私の意見をバッサリ切った若狭さんは全く異なる反応を見せた。言う人によってこんなに受け取り方が変わろうとは思いもしなかった。これも社会人の洗礼なのだろうか。 「もうすぐ係長がお休みに入るなんて信じられないですぅ。寂し〜ですぅ」 係長は笑顔でありがとうと答えていたが、若狭さんは本心で言っていないことは係長も私も分かっている。本当にこの人は表と裏の顔が激しく異なる。 私は、どんどんと人を信用できなくなってきている。彼と別れて暫くは1人を満喫していたが、そのうち同僚や同級生の恋話が羨ましくなり、1人が寂しくなった。だが、社会人になった今、出会いの場というのは限られている。 会社か合コンか。合コンになるとまずメンバーに選ばれるか、自分から集めるかになるが、大学生の頃に彼氏とばかりいた私は交友関係が狭い。会社は何となく嫌だったので結局は出会いがないという事になってしまう。 彼氏はまずは諦めて、1人の夜の寂しさを埋める為、私は夜な夜な幾つかのバーに通い詰めた。バーに来る男性はどこか神秘的で魅力的だが、どこか胡散臭い。私は、一緒に飲むだけと決めてタダ酒を貰うようにしていた。バーテンダーとも仲良くなり私はそこで日々の愚痴を吐き出すようになっていた。
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