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「ごめん。ちゃんと会って話がしたくて」
「うん、来てくれてありがとう」
「俺本当に美影が好きなんだ。でも、美影と会った時には彼女がいて、ずっと二股かけてた」
最悪の告白だが、正直に話してくれている事に感謝した。
「彼女とは何度か別れ話したんだけど、結局別れられなくて、美影なら分かってくれるよな。俺、彼女と結婚する事になったけど、美影とはこのまま関係を続けたい」
何を言い出しているんだろう。私と婚約破棄してすぐに彼女と結婚するのに私との関係を続ける?
「あいつ、本当家事とか全然できないし、可愛いんだけどなんか抜けててたまに疲れるんだよ。その点美影は家事もできるし料理も上手くて、しっかりもので疲れない。本当に結婚したいのは美影となんだけど」
じゃあ何故彼女を捨てないのか……。
「美影も俺が好きでたまんないんだろ、結婚したかったんだろ。結婚は強制結婚みたいなもんだから」
「親が決めた許嫁なの?」
「いや、そう言うんじゃないけど、本当俺の彼女普段はキャピキャピ可愛いんだけど怒らせたら怖いのよ」
どうしてこうも私は変な男を引き当てるんだろう。
「それに、美影もあいつに困ってるんだろ」
「は?」
「あいつが後輩が突発性難聴になったって言っててまさかと思ってたんだけど、この間ついスマホ置き忘れて風呂入ってたら美影から電話入って、表示に美影って出てるの見てさ、あいつが気づいちゃったみたいなんだよな。俺がたまに美影んちから出てそのままあいつと会った時にするジャンプーの匂いってやつが同じって」
「はぁ? もしかして若狭さんなの?」
「あー苗字そんなんだっけ。女の勘ってすごいな。でも、あいつが全落ちしたN大に行っときながら頭悪い発言しちゃった子が美影とはな。それは地雷だからもう言うなよ」
あはは……私は悩む必要はなかった。一番最初にやらかしてしまってずっとそれを根に持たれてたんだ。お酒が入ったあの席でのちょっとした会話で。
謙二さんは笑い泣きし始めた私を抱きしめてきた。
もう限界だ。
私が悪いにせよ、理由も言わずにずっといびり続け、全ては自分のお陰だと豪語する先輩に、これから結婚すると言うのに私と関係を続けようと言ってくる腐った男。
やっぱりここは引っ越すべきだった。
私は謙二を帰らせて、1人になった。この数年は何だったんだろう。私は色々と思い出しながら泣き続け、そのうち疲れて眠っていた。
翌日目が覚めると、不調だった耳は快方に向かっていた。そして私は係長が辛くなったらいつでも連絡してと言って渡してくれていたプライベートの番号をプッシュしていた。
「もしもし、ご無沙汰しています。高橋です。係長ですか?」
「あー! 高橋さん、久しぶり。元気だった? って、これにかけてきてるって事はそうじゃないのかな」
「あはは……そうですね」
私が少し話すと係長は食事に誘ってくれ、ランチを係長の家で食べる事になった。
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