私は橋から飛び降りた

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オフィスにいる時はいつもと変わらない可愛らしい声に優しい若狭さんだ。 特に課長や男性社員がオフィスにいる時は私の側でメールチェックをして優しく指導してくれる。 あの日はきっと機嫌が悪かったんだと思うことにした。そうでないと私の気持ちが収まらない。私が若狭さんを拒否してしまうと、関係はもっと悪くなってしまう。OJTが終わるまでの我慢だ。 相変わらず若狭さんは外出するたびにパンフレットとサンプルを持って行くよう私に依頼するが、1ヶ月経った今でも使われずにいた。 パンフレットは会社から外出時にと支給されているタブレットで案内し、サンプルは若狭さんが持っているものだけを見せていた。 一体これは何の罰なのだろうか……。 こんな日々でも我慢ができるのは、大学時代から付き合っている一歳上の彼氏に愚痴を言えるからだった。 「本当にあれわざとだよ」 「そうだな」 私の愚痴を聞く彼はテレビゲームをしている。私の話なんて半分くらいにしか聞いていない事は分かっているがそれでも捌け口が必要だった。 仲の良かった同級生はみんな順調で何となく言いづらく、彼氏ぐらいにしか言えなかった。 2ヶ月間同じような愚痴を言われ続けたらそりゃ話も半分になるだろう。 「あ、そういや俺来週予定あって会えないから」 「えー、先週もそうだったじゃん」 「わりーわりー、社会人は色々と付き合いってのがあるからさ」 彼の会社は休日も会社行事があるらしいが、ここ最近行事が増えた気がする。実家暮らしの彼は学生時代毎日のようにうちに来ていたのに、最近は頻度が減ってきた。 私も仕事で疲れ切っている時に彼が家にいないとほっとすることもあった。休日に会ってもこうやってゲームばかりして最近は外出すらしなくなった。 私の不満は仕事でもプライベートでも積もっていくばかりだった。
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