私は橋から飛び降りた

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「高橋さぁん、じゃあ、明日は駅集合でよろしくね〜」 翌日、私は家から直行で客先に行くことになり、客先の最寄駅で集合となっていた。 「あ、そうそう、明日のパンフレットとサンプルは私が用意してるからいつものセットは不要だょ〜」 明日に限らず、いつも不要ではないかと思いつつも、重い紙袋に解放される事に私は喜びを感じていた。だが、私の考えは甘かった。 何故帰りに気がつかなかったのだろう、念のため紙袋を持って帰らなかったのだろうかと悔やんでイライラして寝れなかった。 それは帰宅した8時過ぎ、会社から支給されているスマホが鳴った。こんな時間だ、無視しようと思ってると表示に『若狭』の文字が刻まれていた。 「もしもし、お疲れ様です、高橋です」 「あ〜高橋さぁん、ごっめーん。今日持って帰るはずだったパンフレットとサンプル会社に忘れてきちゃって、高橋さん明日朝、ピックアップして持ってきてぇ」 「え? 私がですか?」 「高橋さん以外誰がいるの?」 「いや、はい」 「ありがとぉう。これから彼氏の家にお泊まりだから電話かけてこないでね〜」 事あるごとに彼氏自慢をしてくる若狭さんにイラッとしてしまう。どう考えても私の家よりも若狭さんの家の方が会社に近い。でも、彼氏の家と言うことは別の場所……。 なんだか背中に重いものがのし掛かった気がした。吐く息が黒く澱み妙に気持ちの悪い温かさを帯びている気がする。胃が痛い……。 私は中々寝付けずに明け方にようやく眠りについたが、すぐにアラームで起こされた。あぁ、私が取りに行かなきゃいけないんだ。本当に彼女は忘れたのだろうか。それとも嫌がらせだろうか。でも、何でそんなに嫌われなきゃいけないのだろうか。 私は丁寧に気を遣って対応しているつもりだ。文句も言わず、言われたことをやっているにも関わらずどうしてこんなにも理不尽な仕打ちを受け続けなければならないのだろうか。 待ち合わせ場所には10分前に着いた。そもそも待ち合わ時間も余裕を持った設定で若狭さんから言われていたものの、私より先に若狭さんが来ていたら何を言われるか分かったもんじゃない。 予定時刻を過ぎ、更に10分後にようやく若狭さんが現れた。 「じゃあ、行こっか」 え? 遅刻のお詫びもなく、荷物のお礼もなく、それだけですか?!  私は、若狭さんと一緒に仕事をするだけで人間としての何かを失いそうになっている。
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