私は橋から飛び降りた

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係長が担当していた先は数人の営業に振り分けられることになり、最も取引金額の大きいB社を若狭さんと私が2人で担当する事になった。若狭さんはこの部署ではいい成績を出している上位数名の中の一人だ。B社を若狭さんに振るこの決定は当たり前と言ったところだろうか。 若狭さんも意気込んでいる。邪魔をしないようにサポートをしなければと思っていた矢先、課長から爆弾が投下された。 「ゆくゆくは、高橋君に一人で担当してもらいたいから若狭君、サポートよろしく」 サポートは私でなく、若狭さん。 若狭さんの顔が凍りついているのは言うまでもない。確かに私がここを担当すれば成績的には皆んなに追いつく。だが荷が重すぎる上にサポートしてもらうのは若狭さんというのはどう考えてもスムーズに行くはずがない。 私は若狭さんと一緒に係長から引き継ぎを受け始めた。係長は几帳面で若狭さんの散乱文とは異なり、事前に送られてきた引き継ぎ資料を読むだけである程度理解することができた。担当交代をする前に、私は顧客に対応する為の細かな仕事を係長から教えてもらっていた。 「高橋さん、あまりプレッシャーに思わないでね。本当はサポートも別の人を候補にしてたんだけど、課長が一存で決めちゃったのよ。課長って本当に鈍いから……」 係長は、申し訳なさそうに苦笑いをした。 「ありがとうございます。係長がいないのはすごく心細いですが、元気な赤ちゃんを産んで、元気に戻ってきてください。それまでに私は頑張って成長します」 「ありがとう。でも、頑張り過ぎちゃダメよ。若狭さんは好きな人と嫌いな人で態度が変わるからね。あまり真に受けず、聞き流して、程々に対応してればいいから」 どうやったら真に受けなくて済むのだろうか。聞き流すことができるのだろうか。 そうするには私が成長するしかない、若狭さんの力を借りずに仕事ができるようになるしかない。
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