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ホノカちゃんが猫ちゃんを手に入れたことは、あっという間にクラスの女の子達の間に伝わりました。みんながホノカちゃんに猫ちゃんを見せて欲しいと頼んだので、ホノカちゃんは猫ちゃんを学校に持って来ることになりました。
いつもだと余計なものを持って来ると先生に叱られてしまうので、終業式の日に一回だけ、という約束です。
そんなわけで今日、ホノカちゃんはカバンに猫ちゃんをつけて学校に来ました。その猫ちゃんを見せてもらうために、みんなホノカちゃんを囲んでいるのでした。
「どうしてホノカなのかしら。わたしだって猫ちゃん欲しかったのに」
クラスメイトのユイナちゃんが言いました。ユイナちゃんはどうも、前からホノカちゃんをライバル視している様子です。ホノカちゃんに対抗するように、いつもかわいい服装で学校に来ています。
「くじ引きなんだから仕方ないでしょ」
「わかってるわよ。でもなんかムカつくのよね」
そう言って、ユイナちゃんは行ってしまいました。
ふと気づくと、一人の男子がホノカちゃんの方をじっと見ています。トモミちゃんの隣の席のハルトくんです。ちょっとぶっきらぼうな感じの子ですが、トモミちゃんは少しハルトくんのことが気になっていました。
ハルトくんも、ホノカちゃんみたいなかわいい子が好きなのかな。ちょっとだけへこんだ気持ちになりながらも、トモミちゃんは言いました。
「何見てんの、ハルトくん」
「え? い、いや、何でもない!」
何だかわたわたして答えたハルトくんのポケットから、何かが落ちました。ハンカチのようです。トモミちゃんはそれを拾い上げました。
(刺繍?)
そのハンカチには、すみっこに三毛猫の顔の刺繍がしてありました。ちょっとぎこちない刺繍でしたが、かわいく出来ています。
と、ハルトくんがトモミちゃんの手から、さっとそのハンカチを取り上げました。
「うっかりして、姉ちゃんのを間違って持って来ちまったんだよ。誰にも言うなよ」
恥ずかしかったのか、ハルトくんはぷいとそっぽを向いてしまいました。
その時、先生が入って来ました。これから体育館で終業式があるのです。みんなは教室を出て、体育館に向かおうとしました。
教室から全員生徒が出て行くと、先生は窓をしっかり閉めてから、教室に鍵をかけました。最近、学校の教室に忍び込んで生徒や先生の持ち物を盗んで行く泥棒がこの辺りに出ると言うのです。なので、教室を離れる時は先生が鍵をかけるようになっていました。
戸締まりをしたのを確かめて、先生もクラスの皆と一緒に体育館に行きました。それから終業式が終わるまで、教室には誰もいませんでした。
終業式は滞りなく終わり、それからみんなは手分けをして教室や廊下、校庭をお掃除しました。トモミちゃんは教室を、ホノカちゃんは校庭、ユイナちゃんはトイレの担当になってぶつぶつ言っていました。ハルトくんは廊下の掃除をしつつ、集めたゴミをゴミ置き場に持って行っています。
全部終わって学校中がピカピカになった後、みんなは通知表をもらい、めいめいに自分の荷物を持って帰途につきました。
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