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トモミちゃんは考えました。胸の中で、何かがモヤモヤしているのは確かなのです。そこで、ウサギさんの言った通り、今までのことを最初から話してみました。ところどころ脱線することもありましたが、何とか全部言葉にすることか出来ました。
すると、ウサギさんは掃除の手を止めずに言いました。
「そう言えば、学校荒らしの泥棒、捕まったんだよ」
「え!? そんなの知らない!」
意外にも、その言葉に食いついたのはホノカちゃんの方でした。ウサギさんは平然として答えました。
「今朝のことだからね。そろそろ話が広まり始めてるんじゃないかな。ここから駅三つほど離れた町の学校に忍び込もうとして、取り押さえられたんだよ」
ウサギさんがどうしてそんなことを知っているのかはわかりませんが、その言葉に嘘はないように思いました。それを聞いて、トモミちゃんは何だかもっとモヤモヤしてしまいました。
「君がモヤモヤしてるのは、クラスの誰かが犯人だと疑いたくないからじゃないかな?」
ウサギさんの言う通りでした。外から誰かが入って来たのではないなら、クラスの中に犯人がいることになってしまいます。確かにユイナちゃんとか、猫ちゃんを欲しがっている子はいましたが、誰も勝手に取って行ってしまうようなことはしないとトモミちゃんは思うのでした。
その時。
「トモミとホノカ、こんなとこにいたのか。……って、なんだこのウサギ!?」
驚いた声を上げたのは、ハルトくんでした。ハルトくんの家は、トモミちゃん達の家とは反対方向です。わざわざこの公園まで、どうしてやって来たのでしょう。
「ハルトくん、なんでここに?」
「これ」
と、ハルトくんはハンカチに包んだ何かを差し出しました。結び目を開いてみると、あらわれたのはあの猫ちゃんでした。
「えっ!? これ、どこにあったの?」
「学校のゴミ置き場にあった。捨ててあるならもらってもいいかなと思ってたけど……やっぱり返した方がいいと思って」
ということは、犯人はせっかくの猫ちゃんを捨ててしまったことになります。もしかして、ホノカちゃんへの嫌がらせでしょうか。
「まさか、ハルトくんじゃないよね?」
「そんなことしないよ! 大体、俺がやったなら、こうやって返しには来ないだろ」
それはハルトくんの言う通りです。
「ちょっと考えてみようか」
ウサギさんが掃除しながら言いました。
「猫ちゃんは終業式の前までは確かにあった。終業式の最中は、教室には鍵がかかっていて入れなかった。その後の大掃除の最中に、ハルトくんがゴミ置き場で猫ちゃんを見つけた」
トモミちゃんはうなずきながら、ホノカちゃんは少しうつむいて、ハルトくんはウサギさんをじっと見ながら話を聞いています。
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