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「猫ちゃんを欲しがっている子は他にもいたけれど、それなら捨てるようなことはしない。泥棒は捕まったし、外から誰かが入って来たら、学校中を大掃除しているから誰かに見つかるはずだよね。そして、ホノカちゃんにこんな嫌がらせをするような意地悪な子もいない。そうだね?」
三人はそろってうなずきました。
「なら、考えられることは一つだ。……ホノカちゃん、どうしてこんなことをしたんだい?」
「えっ……?」
トモミちゃんとハルトくんは、驚いてホノカちゃんの方を見ました。ホノカちゃんは、ちょっと困ったような顔をして言いました。
「──わかっちゃった?」
それを聞いて、トモミちゃん達はもっと驚きました。
「他に猫ちゃんを持って行ける人はいないし、猫ちゃんくらいならそのトレーナーの中に隠せるし、校庭を掃除していたのなら、こっそりゴミ置き場に行くことも出来るだろうからね」
「じゃ、本当にホノカちゃんが……?」
ホノカちゃんはこくんとうなずきました。
「ホノカちゃんにもモヤモヤがあるんだろう? それを言ってみたらどうかな」
ウサギさんにうながされ、ホノカちゃんは口を開きました。
「わたし、かわいい格好って、本当はそんなに好きじゃないの。でも、ママはいつもわたしにかわいい格好をさせたがるの。服とか、靴とか、カバンとか、マスコットとか」
猫ちゃんをちらりと見て、ホノカちゃんは言葉を続けます。
「まるでママの着せ替え人形みたい。わたし、ホントは今日の服みたいな、かけっこやダンスやスポーツが出来る服が好きなの」
どうやらホノカちゃんは、見かけよりは活発な女の子だったようです。今朝嬉しそうだったのは、好きな服装をしていたからなのでしょう。
「この猫ちゃんだってそう。ママ、どうしてもわたしの持ち物にこれをつけさせたかったみたい。……だからね、ママ、ズルをしたの。お店の人にお金を払って、わたしに1等のくじが行くようにしたの」
トモミちゃんは、1等のくじを引いたホノカちゃんがただ黙ってくじを見ていたのと、ホノカちゃんのママが自分のことのように喜んでいたのを思い出しました。そんなことで猫ちゃんを手に入れても、確かに嬉しくはありません。
「なら、捨てなくても、誰かに黙ってあげちゃった方が良かったんじゃない?」
ウサギさんの言葉に、ホノカちゃんは首をふりました。
「うちのママ、クラスの女子のママのほとんどとお友達なの。だから、誰かにあげても、すぐにママにバレちゃう。捨てるしか思いつかなかったの」
「なるほどね」
ウサギさんはすこし頭を揺らして言いました。
「でも、捨ててしまったら猫ちゃんもかわいそうだ。ママにバレなくて、猫ちゃんを大事にしてくれそうな人にあげるのはどうかな」
「そんな人、いないよ」
「いるよ。……そこにね」
ウサギさんが示したのは、ハルトくんでした。
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