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冬にしては日差しの暖かい、小春日和の日でした。町の小学校には、生徒達が登校して来ていました。
今日は終業式の日です。明日から冬休みで、みんな何となくウキウキしています。だって、これからクリスマスもお正月も来ます。プレゼントやお年玉がもらえますからね。
三年生の教室の中で、女子のみんなに囲まれているのは、おとなしそうな女の子のホノカちゃんです。ホノカちゃんはクラスで一番かわいい女の子で、服装もいつもフリルやレースのついたかわいらしいものを着ていました。長い髪も、きれいなリボンやすてきなバレッタなどでまとめています。それはホノカちゃんにとっても似合っていて、女の子達のあこがれでした。
でも、今日は学校で大掃除があるので、いつもより動きやすい、ちょっとダボッとしたトレーナーとデニムのキュロットスカート、タイツといった服装です。それでもホノカちゃんは、何だかいつもより嬉しそうでした。
ホノカちゃんが嬉しそうなのは多分あれのせいだと、ホノカちゃんの親友のトモミちゃんは思っていました。
この近くのショッピングセンターのおもちゃ屋さんでは、毎年この時期に小学生だけが引けるくじ引きをします。当たりが出たら、すてきな賞品がもらえるのです。
この前の日曜日、トモミちゃんやホノカちゃんを初めとしたクラスの女の子達は、一緒にショッピングセンターに遊びに行って、みんなでくじ引きをしました。何人かの女の子のママ達が引率役としてついて来ていて、くじは一人一回だけ引くこと、と決めていました。
今年の一等の賞品は、女の子用と男の子用に分かれています。男の子用の賞品は、特撮ヒーロー「マスクライザー」のソフトビニール人形。そして、女の子用の賞品は──
「うわあ、かわいい!」
女の子達が口をそろえて言ったように、それはとてもかわいい猫ちゃんのぬいぐるみマスコットでした。首に赤いリボンが巻かれていて、キラキラ光るストーンがついています。
女の子達はみんな、この猫ちゃんが欲しくなりました。もちろん、トモミちゃんもです。普段はどちらかというとぽんやりとしているホノカちゃんも、目を輝かせて賞品が飾られている棚を見つめています。
みんなはママ達に言われた通り、一人一回だけくじを引きました。店員さんに渡されたくじの紙を開きます。その結果は……。
「あー、はずれちゃったー」
「わたしもー」
トモミちゃんのくじにも、最下位の「7等」の文字がでかでかと書かれていました。参加賞のガチャガチャ一回券です。
「ホノカちゃんは?」
と、トモミちゃんは黙ってくじを見ているホノカちゃんをのぞき込みました。すると。
「えっ?」
トモミちゃんは驚きました。ホノカちゃんのくじには、大きく「1等」と書かれていたのです。
「すごーい! ホノカちゃん1等だ!」
トモミちゃんは思わず大声を出しました。それを聞いて、みんなが集まって来ました。
「えー、ホント?」
「ホントだ! 1等だ!」
「まあ、ホノカ、すごいわ。さっそく引き換えてもらいましょうね」
引率役の一人のホノカちゃんのママも、自分のことのように喜んでいます。
こうして、猫ちゃんのぬいぐるみはホノカちゃんのものになったのでした。
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