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「...大河てめぇ、なんで黙ってた」
結城が去った後しばらく沈黙していた久我だったが、ゆっくりと口を開いて大河に冷たい眼差しを向けた。
「...言ったら、また面倒なことになると思って」
「ほんと馬鹿犬だな。...勝手によその奴と仲良くなったり、知らねぇ奴からマーキングされたり。
...お前にはほとほと呆れるよ」
久我はそれだけ言うと、床に蹲る大河の前に腰を下ろして目線を合わせてくる。
その目にはたしかに怒りが浮かべられているのに、何故か悲しそうな顔をする久我に大河は困惑した。
「大河、まだわかんねぇの?」
「は、何が...」
「俺、お前のことこんなに好きなんだよ。なのになんで俺だけのことを見てくれない?なんで俺から逃げようとする?」
久我はわけがわからないと言った具合でそう尋ねてくるが、こんなことをして支配しようとするその考えが大河には理解できなかった。
「久我のそれは、”好き”じゃねぇよきっと。本当に好きなら、そんなことはしない。できるはずがない。」
「何で、そんなこと言うの大河。
...俺は好きだよ、大好き。世界で一番大河のことを愛してる。好きで好きで堪らなくて、どうしようもねぇんだよ、」
久我の言う”好き”を否定すれば悲痛に顔を歪め、床に横たわる大河の胸に久我はそっと体を寄せる。
「...久我、」
「嫌だよ大河、俺のこと嫌いにならないで」
「...」
懇願するように縋り付いてくる久我は、狂気を浮かべていた時とは同一人物であるとは思えぬ程の変わりようで、大河はその安定しない情緒に恐怖を覚えた。
「...とら..ちゃん..、」
名前を呼ばれ目を向ければ、やっと感覚が戻ってきたのか少なからず手足が動くようになってきたらしい天馬が、複雑そうな顔をしてこちらを窺っていた。
そんな天馬に対して、今まで弱気に震えていた久我は顔を上げ口を開く。
「天馬、...見てろよ。今から俺がどれだけ大河を愛してるか見せてやる」
久我はそれだけ言うと、大河を組み敷いたまま上体を起こし、大河が着ていた学ランを脱がせた。
そしてTシャツを胸のあたりまで捲ると、妖艶な笑みを浮かべて自身の唇を舌で舐めずる。
「大河、気持ちよくしてあげる。いつも痛いことばっかりだったから、今日は痛み以外で気持ちよくなってよ」
「は、久我......」
「久我、やめろ...!とらちゃんに、何する気だ...っ、」
久我は焦る二人を見てより一層笑みを深めた。
「何って、...そんなの言わなくてもわかんだろ?」
大河は中学の時にされた記憶が一気に甦り、天馬の前でこれから行われるであろう凌辱を想像して目を見開いた。
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