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夕飯も食べ終え、後は寝るだけとなった頃。
天馬は意を決したようにゆっくりと口を開いた。
「とらちゃん、明日からはずっと俺と一緒にいて。あとは弟にもこの話しよう。...とらちゃんが一番心配してるのって、稜くんに手を出されることでしょ?」
「...うん」
「家族のことを気にするななんて無理かもしんないけど、それが足枷になってるのも事実だし。...そればっかり考えてても先進めねぇよ」
天馬はそう言って、大河の目を見据える。
「大丈夫、とらちゃんはもう一人じゃないから。俺と一緒にこの生活終わらせよう」
「...、うん」
その言葉に大河が頷けば、天馬は小さく笑った。
「..ずっと、思ってたんだけど」
「うん?何?」
大河は今まで疑問に思っていたことを、この際だからと尋ねてみる。
「...天馬は、何で俺にそこまでしてくれるの」
悔しくはあるが、俺は久我のように頭も顔も良いわけでもなく、何もかも人並みかそれ以下だ。それに加えて今のこの状況。
わざわざ不利益を被ってまで俺といるメリットは何もない。
それにもかかわらず天馬は俺と一緒にいることを選んでくれていて、ありがたいと思いつつも何故そこまでしてくれるのかと普段から疑問に思っていた。
「...そんなの決まってんじゃん、俺がとらちゃんと一緒にいたいと思うから。俺とらちゃんのこと好きだもん」
間髪いれずにそう答える天馬の言葉には嘘があるように思えなくて、大河は戸惑った。
「...なんか、ありがとう、」
「どういたしまして。..てかとらちゃんも俺のこと好きっしょ?」
笑いながらそう聞いてくる天馬に、大河は小さく頷いた。
照れ臭くてうまく言葉には出来ないが、俺は天馬のことを特別だと思っている。
ずっと孤独だった自分に手を差し伸べてくれたからというのもあったが、天馬と関わっていくうちに天馬という人間を好きになった。
「...俺も、天馬のこと好きだよ」
「...っ、...はは、そんな真剣に言われると照れるわ...」
「あ、ごめん..」
天馬は大河の「好き」と言う言葉に、嬉しさのあまり一瞬息が詰まるが、すぐに平静を装って言葉を続ける。
大河のそれは友達としてという意味だと分かっているのに、抑えきれなくなりそうになるこの気持ちに、天馬は必死に目を背けた。
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