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昼休みにもなればいつものように友人達と久我は机を寄せて談笑を始める。
大河は相変わらず久我と目を合わせることはなく、ぼんやりと外を眺めている様子に久我は沸々と怒りが湧いた。
「とらちゃん、飯いこ」
「...うん」
天馬に声をかけられて自分には向けられることのない表情で目元を緩ませる大河が視界に入り、心の奥が締め付けられるような感覚を覚える。
「天馬のやつ最近付き合い悪いよなあ」
「中島と連むとか正気かよ。前々からよくわかんねぇ奴だとは思ってたけど、やっぱ俺らとは違うな...ちょっと見損なったわ」
教室を出ていく二人を見て、友人達は口々にそんなことを話し始めた。
「久我ももう中島と関わんのやめとけよ。家一緒なのは仕方ないとしても、別に仲良くしなきゃいけない訳じゃないっしょ」
「...うん、そうだね」
友人達の言葉など碌に頭には入ってこないまま適当に相槌を打ち、大河のやつ調子乗ってんじゃねぇよと心の中で悪態をついた。
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「とらちゃん、今日俺が見つけた場所連れてってあげる」
天馬はそう言って大河を先導するので、その後を大人しく着いていけば、連れて行かれた先は別棟の裏にある花壇が見える場所だった。
「この前ゴミ捨て来た時たまたま見つけてさ。外だけど日もここはそんな当たんないし」
そう言って天馬は日陰になっているコンクリートの段に腰を落ち着けた。
大河もそれに倣い腰を落ち着け、咲いている花をぼんやりと眺める。
「...ゴミ捨て行くならもっと近い道あんのに」
「え、うそ?俺いつもここ通ってたんだけど!...誰も教えてくんねぇの、冷たいなあ」
大河の言葉に天馬は大袈裟にリアクションを取るが、でもそのおかげでここ見つけられたしいいでしょとすぐに呟く。
「静かで綺麗でいい場所だな」
「でしょ?俺もここ見つけた時とらちゃん絶対連れてこよって思った」
「..そっか、ありがとな」
嬉しそうに笑う天馬につられて顔を緩めれば、天馬は少し驚いたような顔をした。
なにかしてしまっただろうかと大河が内心焦っていると、その焦りを感じ取ったのか天馬はすぐに口を開く。
「...やっぱりとらちゃんは笑ってるのが一番だね」
その言葉を聞いて、大河は今までいかに自分が笑えていなかったのかを悟った。
天馬のおかげで、こんな些細なことだが変化がある。
大河は照れ臭そうに頬を掻いてから、小さくありがとうと天馬に伝えた。
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