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「大河、おいで」
帰宅すればリビングに顔を出すことなく、すぐに自室へと連れて行かれる。
部屋に入れば乱雑に荷物を置いて学ランを脱がされ、久我のベッドの上へと誘導された。
「...大河」
大河がわけもわからずベッドの上に座っていると、久我はふいに名前を呼んでそのまま唇を重ねてくる。
舌を捻じ込むようにして大河の口内を犯し、歯の裏を舌先でなぞった。
「...っ、」
「大河、気持ちいい?」
「...気持ち良いわけ...あるかよ、」
生理的に受け付けない口付けに睨みつけるような目でそう返せば、久我はいつものように怒るような素振りは見せず、そっか...と悲しそうに目を伏せた。
「大河、...右手見せて」
「は...?」
重ねられていた唇を離しそんなことを言い出す久我に、大河は困惑しつつも言われた通り右手を差し出す。
久我はそれを見て一言、痛そう...と続けた。
しかし大河の全身の怪我は全て久我にやられたもので、何でそんなに他人事なんだよと沸々と怒りが湧いてくる。
「...久我がやったんじゃん、今さら何なんだよ..」
「ごめんね大河、」
「....」
本当に申し訳なさそうな顔で謝罪してくる久我に得体の知れぬ違和感が拭えずにいれば、差し出していた右手にいきなり激痛が走る。
「...いっ...、!」
「...ごめん。ごめんね、大河」
「ぐっ...う、..痛い..ッ..、やめろ...!」
「やめられないよ、大河。だって大河は馬鹿犬なんだもん」
そう言って久我は俯いていた顔を上げて、口元を歪めた。
にんまりと笑うその姿は狂気が満ちていて、怒気を含んだその視線に大河はたじろぐ。
「....っ、」
「俺という存在がありながら他の男に尻尾振ってさ。俺のことほったらかしで、あいつにあんな顔で笑って...俺がどんな思いでいたか考えた?ねえ、馬鹿犬」
「...やめ、」
「俺のこと何だと思ってるわけ?舐めすぎだろほんと」
久我はそう言って右手の指をひとまとめにして思い切り握り締める。
元々ズキズキとした痛みのあったそれらは圧迫されると同時にまた激痛が走り、大河は思わず目を剥いた。
「....っぐぁ..、!」
「あーあんま声出さないで。あほ達にバレるとめんどいから」
大河は口元を押さえられ、痛みに歯を食いしばって耐える。
それでも久我はその力を緩めることはなく、楽しそうに口に弧を描いた。
「夏休み楽しみだね。俺とずっと一緒にいてね、大河」
「...ふ、....うぐ...っ、」
「聞いてんのかよ」
久我はまともに話すことすらできない大河の腹部に拳を思い切り振るって、痛みに悶えるその姿に心が満たされていくのを感じた。
「...はあ、やっぱ俺、大河がいないとだめだ。好き、好きだよ大河。一生離さない、誰かの所に行くなんて絶対許さないから」
「...は、...くっ..、」
痛みで意識が朦朧としてきた大河は左手で咄嗟に久我の腕を掴むが、それもすぐに布団に押さえつけられ抵抗ができなくなる。
「何で抵抗しようとするの?お前は俺の犬なんだよ、俺の言うことだけ聞いてれば良いの」
そう言って久我は大河の首に手を掛け、力を込めていく。
締め付けられることによって上手く呼吸ができなくなった大河は、焦ったように当てがわれた久我の手を掴むが力が緩められることはない。
息が苦しくて意識が朦朧とし、生理的な涙が目尻から流れた。
抵抗しようにもそもそも抗えるほどの気力も残っておらず、大河の手は力なくだらりと垂れる。
そんな時、自室の外から扉をノックする音が聞こえた。
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