終焉の兆し

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天馬に言われた言葉の意味が理解できず、大河はおうむ返しのようにその言葉を口にした。 「...一緒に、」 「そう、一緒に。」 肯定しながら天馬は小さく笑い、布団を出ようとずらした体はすぐに引き寄せられる。 「...いや、ちょっと、...待って。それはどういう、」 「はは、とらちゃん動揺しすぎだって。前もしたじゃん?」 「...それは、」 天馬には過去に何度かしてもらったことがある。 忘れかけてた記憶が一気に呼び覚まされ、大河の鼓動はどくりと脈打った。 「...でも俺は大丈夫だから、」 「そうなの?でもとらちゃんも俺と四六時中一緒にいるからできてなくね」 「いやまあそうなんだけど、...そう、なんだけど...」 焦りと羞恥から思うように言葉にできず、大河の口からは説明にもならない肯定だけが紡がれる。 天馬はそれを見て困ったように笑い、背中に回された手からとんとんと振動が伝わった。 「...とらちゃんが嫌なら俺一人でするし、全然断ってくれて良いから」 「うん、」 「でも俺は、一緒にしてぇなあ..」 耳元でそう囁かれた言葉は妙に甘くて、断って良いと言う人間がする行動じゃないだろと恨めしそうに視線合わせる。 「...天馬、それはずるい、」 「ごめんやっぱそうだよね。でも分かっててやってる」 「...尚更タチ悪りぃじゃん」 普段はどこか大人びていて余裕のある天馬から、今は子供のような無邪気さと目の奥に明らかな熱を感じ、大河は意を決したようにその唇に顔を寄せた。 大河の突然の行動に天馬は大きく目を見開き、焦ったように言葉を紡ぐ。 「...っ、...とらちゃん変なところ大胆だよね。まじで焦るわ、」 「天馬ほどじゃねぇから」 「...てかその意味わかってる?俺今そんなことされたら、」 天馬は震える声でそんなことを言い出すので、仕掛けてきたのは天馬なのに何故そんなにも動揺するのかと不思議に思いつつ、大河は静かに名前を呼んで制した。 「天馬」 「...なに?」 「分かってて言ってるから。大丈夫。俺もそこまで鈍くねぇよ」 「...っ、はあ....やっべぇ」 大河の言葉に天馬は視線を逸らし、顔を手で覆う。 表情は窺い知れないが耳が赤くなっているのが見えて、照れているのかと目の前の存在を愛おしく思った。 「...今日俺我慢しないけど、いい?」 「今更確認すんなよ。俺のことはいいから、今まで溜まってた分しっかり抜いとけ」 「...とらちゃん時々男前すぎてびびるわ、」 このどこか緊張感を帯びた空気に天馬は眉を下げて笑い、そして次の瞬間には頬に手が添えられる。 「...好きだよとらちゃん、」 「ん、..っ」 甘い言葉とともに唇が重ねられ、過去にしていたものとは違った深いキスに、大河は鼓動が速くなるのを感じた。 「...ん、はぁ、...っ、」 「とらちゃん..、口ん中めっちゃ甘い、」 「...、さっきまで飴舐めてたから、」 「いちいち可愛いなまじで、」 キスの合間にも器用に会話を挟んでくる天馬に、荒くなる呼吸の中、大河も必死に答えていれば、その隙を見計らったかのように口内に舌が捩じ込まれる。 「...っ、」 「美味い...」 「...ちょ、天馬...っ」 「だめ、無理」 天馬の意味のわからない呟きが聞こえたかと思えば舌を絡め取られ、そんな行動を予期していなかった大河は驚いて天馬の胸を押し返した。 しかしそんな行動も天馬は想定していたのか、悪戯に笑われてすぐにまた舌が絡められる。 「はぁ、...っ、」 口の端から自分のものかも分からない唾液が伝い、それすらも妙に妖艶に思えて、大河は内心焦った。 この熱い感覚には覚えがある。 天馬に欲情しているのだと悟った時にはもう遅くて、大河はそれを悟られないようにと懸命に腰を引いた。
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