終焉の兆し

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「....とらちゃん、もしかして、」 「っ、言うなよ」 「勃ってる?」 「言うなっつったろ馬鹿、」 大河の焦ったような不自然な行動に天馬は意地悪に問いかけ、図星を付かれた大河はバツが悪そうに視線を伏せた。 「あー...もうなに、嬉しすぎるわ、」 「....、」 「まあ気にしないでよ。俺もおんなじだから」 天馬はそう言っておもむろに大河の左手を取ると、それを熱を持って反り立った自身のものにあてがう。 「...え、まじ、」 「なに今さら驚いてんの。さっき言ったじゃん、俺ムラムラしてるって」 「いやそうだけど、まさか、」 「はは、俺も男だからさ...好きな人目の前にこんなことしてたらそりゃね。てかする前からか」 やれやれといった感じで天馬は目を細めて笑い、そのまま体を起こした。 「え、なに」 「んー...ちょっとね」 天馬はそれだけ言って言葉を濁すと、仰向けに横たわる大河の上に馬乗りするような形で体制を整える。 一体何をするつもりなんだとぼんやりとする思考の中じっと眺めていると、天馬は自身の着ているスウェットをずらし、にこりと笑った。 「は、...まじで何。なにすんの」 「とらちゃんと一緒に気持ち良くなろっかなって」 そう言って視線が逸らされたかと思えば、今度は大河のスウェットに手をかけ始める。 ああ俺も脱がされるのかと他人事のように考えていれば、すぐにひやりとした冬の外気が熱を持ったそれを包み込んだ。 「...んっ、」 脱がされる際にスウェットのゴム部分が自身のそれに引っかかり、思わず声が漏れる。 すぐに声を抑えようとまだ痛む右手で口元を覆うが、それも天馬によってやんわりと剥がされた。 「とらちゃん、顔見せて」 「...っ、」 「はあ...えっろいな、」 大河の瞳には未だに動揺の色が滲むものの、たしかに熱を帯びていて、それが自分に向けられたものであるとわかると、天馬は堪らなく嬉しかった。 「...とらちゃん、痛かったら言ってね」 「え、ああ...うん」 天馬は大河の怪我を労るように優しく声を掛け、それと同時に下着の上からゆっくりと自身のそれを大河のものに這わせる。 そのまま腰を揺らせば、先程とは比べものにならないほどの快感が押し寄せ、油断すれば漏れそうになる声を必死に噛み殺した。 「...っ、やばいなこれ...とらちゃんとこんなんできるとか、夢みてぇ」 「...は、ぁ...っ」 「とらちゃん、っ...気持ちい?」 「あんま、...そういうこと...聞くなよ、」 口を開けば意思とは関係なく漏れ出る吐息に大河は羞恥を覚え、行為の最中でも絶え間なく声を掛けてくる天馬をじとりとした目で睨む。 「...あーだめだめ。今そう言う目しないで、...全部俺興奮しちゃうから、」 「...何だよ、それ..っ、」 こんなことをしていても相変わらず余裕そうな天馬に、自分一人がこうも余裕がないのかと経験の差を見せつけられつつ、もっと近くで触れていたいと、天馬の袖口を掴んだ。 「...どした?」 「天馬、キスしたい、」 「...っ、ああもう、」 大河の素直な言葉に天馬は嬉しそうに笑い、すぐに唇が重ねられる。 舌を絡めるのは先ほどと変わらぬ筈なのに、下半身に明らかな快楽を得ているせいか、酷く妖艶でいやらしく感じた。 「...ん、..はぁ、」 気付けば自身の腰も快感を求めて揺れ動き、擦れ合う熱が更に加速する。 「...っ、それはやばいって、」 「天馬、」 「...あ、...っ...」 余裕なく紡がれた言葉とともに触れていた唇は急に離され、それと同時に天馬は自身の下着へと手を伸ばした。 「とらちゃん、直でしていい..?」 「...まじで言ってる?」 「うん。まじ」 天馬の突然の言葉に大河は瞳を揺らすも、熱を持ったそれは着実に直接的な刺激を求め始めていて、大河は戸惑いながらも小さく頷く。 「...一緒に気持ち良くなろ、」 「今あんまそういうこと言うなって、」 「はは、」 大河の言葉にも天馬は誤魔化すように笑い、そのまま下着が引き下げられる。 友人同士でなんてことをしているんだろうと頭の片隅で考えつつ、天馬とはもう友人だという意識はないなと思ってしまっていることに、妙に納得した。 天馬は意を決したように大河のそれに自身のものを這わせ、手で包み込む。 その手をゆっくりと動かせば、二人の先端から溢れていた体液が絡み、とてつもない快感が襲ってくる。 「んぁ、...っ、は、」 「なんだよこれ、やべぇ...気持ち良すぎる、」 大河の顔を窺い見れば、そこには明らかに快感に目を潤ませ悶えている姿があって、必死に声を押し殺そうとしている健気さにまた鼓動が速くなるのを感じた。 手の動きに合わせて腰も揺れ動かせば、大河もそれを追うように腰を振る。 きっと無意識にそうしているのだろうが、その姿は天馬の興奮を増させるには十分で、とっくの昔に忘れ去られた理性を更に遠くへと追いやった。 「....っ、天馬、」 「ん、...どした?」 「俺、ごめん...いきそ、」 泣きそうな顔でそう言ってくる大河に、天馬は咄嗟に顔を寄せる。 そのまま唇を重ね、息継ぎをする合間に小さく声を掛けた。 「いっていいよとらちゃん、」 「...でも、..それじゃ天馬が、」 「いっつも俺のことばっか。大丈夫、俺も...もういきそうだから、」 天馬はそう言って再び大河の舌を絡め取る。 お互いに無我夢中で腰を振り、どちらのものとも分からない体液がその速度を増させる。 「...天馬、無理、むり...っ、」 「うん、いいよとらちゃん、」 「は、ぁ....、い、く...!」 辿々しく紡がれた言葉の後に大河の体は大きく震え、それと同時に天馬の手には連続して精液が吐き出された。 それを感じた天馬もすぐにその後を追うように体を震わせ、今まで感じたことのない大きな快感が全身を突き抜ける。 「...っ、んぁ、」 天馬の手の中でお互いのそれは何度もどくりと脈打ち、その度に手からぽたぽたと溢れ落ちた。 「...っ、気持ち良すぎて死ぬかと思った、」 「...」 「てか俺もとらちゃんも久々だったから、すっげぇ濃いわ」 天馬はそう言って当てがっていた手を大河の目の前に差し出し、愛おしそうにそれを眺める。 「おいやめろ、見せんな」 「いいじゃん。俺ととらちゃんの愛の結晶」 「...天馬切り替え早すぎだって、」 久々の快感に怠惰感と幸福感が入り混じって動けずにいる大河とは違い、天馬はいつもの飄々とした様子でそんなこと言うので、思わず文句が口をついた。 「こうでもしてないととらちゃんに甘えちゃいそうでさ、」 しかし天馬から返ってきたのはそんな弱気な言葉で、大河はそれを聞いて優しく目を細める。 「...甘えればいいだろ。俺はいつだって天馬の目の前にいるんだから」 「...はぁ、やっぱ好きだわ、とらちゃん」 大河の言葉を聞いた天馬はその顔を破顔させ、すぐに大河に体を預けた。 「好きが止んねぇよ。どうしてくれんだよ」 「俺に聞かれても...」 「はは、とらちゃんらしいわ。そんなとこも好き」 「あんま好き好き言われると、照れる...」 大河が困ったように目を逸らせば天馬はまた笑い、耳元で「好きだよ」と甘い声で囁いた。
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