幼なじみ

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   幼馴染ってどうなんだろう。  物心ついたころから隣にいて、言うならば「初めての友達」だった。  幼馴染がいるといえば、うらやましがる友達も少なくない。   私が持ってる少女漫画にも、あいつが持ってる少年漫画にも、「幼馴染のあの子/アイツ」とドキドキ! みたいな話がたっくさん載ってる。  だけど別に、現実はそんないいものではない。  毎朝私が起こしに行くなんてことはしないし、というか高校生になってからあいつは部活の朝練で毎朝早くて私より先に起きていて私より遅く帰ってるから、部屋の窓の明かりが点くのを確認するくらい。  ただ、中学まではずっとクラスが同じだったから、初めて離れたこの距離感にもどかしさを感じているのは確かだ。  ……あと、もうひとつ。 「おい」  夕暮れの教室。  試験期間だというのに開かれた委員会が終わり、誰もいない教室で荷物をまとめていたら聴きなれた――ただし数年前にすっかり低くなってしまって、未だに少し戸惑っている――声に呼ばれた。  前の方の扉を見ると、あいつが不機嫌そうに立っている。  私より頭ひとつ半分は高く伸びたその顔は、高校生になってから本当に……男らしくなったし、正直格好よくなりやがってくらいには思う。絶対言わないけど。  当然うちのクラスの女子たちにも密かに人気があるらしいから、表立って話す事はほとんどない。  見られると面倒くさいから。  女子の世界は面倒くさいから。  だからクラスが離れたことは……良い事なんだ、きっと。
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