【こどものおはなし】

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 幼気(いたいけ)な子供の質問や頼み事は、時に大人を困らせる。どう答えるのが正しいのか、色々と悩んでしまうからだ。  下世話な話になるが、特に性にまつわる質問は顕著に大人を困惑させるもの。  気まずさで嘘をつき、間違えた知識を授けるのも気が引ける。  だけれども、真実を伝えるのも(はばか)られるような気がする。  どのように答えるのが正しくて、どのように答えるのが間違えという明確な正誤も存在しないのではなかろうか。しかし、本来ならば子供と向き合って語らうべき大切な話でもあろう。  だが、恐らく世の大人たち誰しもが答えあぐねる。そう断言できる――、などとも思う。 「ねえ、ヒロ。――赤ちゃんは何処から来るの?」  そして、さような問いを投げかけられた際に、ヒトの思考というのは一瞬止まるのだな、との妙な実感が胸中に湧いた。  あまりにも脈絡が無く、何を言われたのかが理解し難くて――。頭の中が真っ白くなった後に紺碧の瞳を丸くし、問いを投げたビアンカを見やれば不思議そうに小首を傾げられた。  ビアンカは身持ちが硬くて奥手――というより、どちらかと言えば無知に近いと薄々気付いていた。しかしながら、ここまで未熟だとは思わなんだ。  ()()()()()として過ごしていた頃は貴族の令嬢だったと聞いたが、性教育はされなかったのだろうか。上流階級の子女には乳母が付き、その乳母が殆どの教育を担うという話だったが、地域によって違いがあるのだろうか――。  そんなことを矢継ぎ早に考えつつ、頬を引き攣らせた笑いを浮かしつつ。ヒロは漸くといった態で口を開いていた。
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