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「えっと、ビアンカ。その質問は……、他の誰かにもした、かなあ……?」
これがヒロにとって第一の問題だ。もしも他の者に同様の質問を投げていたら、と思うと気が気でない。見目の年齢に反してあまりにも思考が幼すぎ、兄同然の保護者のような目線で見て、妙な焦りを覚えてしまうから。
しかし、ビアンカはゆるりとかぶりを左右に振って、ヒロの心配を杞憂にした。
「ううん。ヒロが一番詳しいと思ったから、誰にも聞いていないわよ」
「え。あ、そう……? 僕って、そんなにソウイウコトに詳しそうかな……?」
思わぬビアンカの返答である。ヒロが自身を指差して苦笑いで問えば、ビアンカは純粋な眼差しと笑みを見せてこくこくと頷く。
確かにかなり遊んでいた――、しかも海賊の男衆がする褒められたものでない遊びをしていた時期があるのは事実だし、端正な顔立ちと明朗快活な性格を自覚した振る舞いで女っけが無くて困ったこともない。ここは女運の悪さは置いておいて。
――因みに現状は心持ちの変化があって、長らくご無沙汰である。
ただ、その話はビアンカには微塵もしていない。知られたら卒倒されるか、軽蔑されて口を聞いてもらえなくなりそうだから。
そして、詳しそうな素振りすら見せていない。――下心で変に絡むこともあったけれど、せいぜいキスして首筋や胸元に痕を付ける程度で留めている。まだまだ閨事に持ち込むには様子見の段階で、押し倒してすらいないのだ。
いや。だけれど、何だかんだそこまでさせてもらえているのを考えるに、案外これは無知を装ってのお誘いなのかとも一瞬だけ頭を過るが――。ビアンカの顔色を窺う限り、全然その気は無くて違うと断言できる。
ヒロが二転三転と考えを巡らせていれば、ビアンカはじっと見つめてくる。その綺麗な眼差しが自らの邪な心を痛ませる気がするのは、恐らく気のせいでないだろう。
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