【朝のひとときに】

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 オヴェリア群島連邦共和国こと群島は温暖な気候の島国だ。  だけれど、常夏とまではいかずに四季が存在して、冬も間近になった今時期は朝晩と冷え込みを感じるようになってきた。  とはいうものの、ヒロが言うところの『本島(おか)』である東の大陸や中央大陸の季節の移り変わりを思えば、それほど寒いと思わないのが旅をした経験からの体感だったりする。  それでも、手の先や足の先は冷えてしまって、やはり春や夏との違いを肌身を以て実感した。 「――でも……、今は(あった)かい……」  (ぬく)もる布団の中で横になったまま思い馳せ、思ったことが小さく口をつく。  視線を上目に動かせば、至近距離に映るのは見慣れてきたヒロの寝顔。  黒髪と同じ色の長い睫毛が縁どる、海の碧を思わせる綺麗な瞳は伏していて見えない。規則正しい寝息を立てて、とても気持ちよさそうに眠っている。  ほんの少し前――出逢ったばかりの頃まで、眠るという行為を放棄していたのが嘘のよう。今は見目の(とし)相応な少年のあどけない寝顔だ。  ヒロは妙に寒がりで冷え性で、暖を取りたいと称して布団に潜られて。特に何をするでもされるでも無く――いや、実際は悪戯(いたずら)と言うのも(はばか)られることをされたりもするのだけど。それは置いておいて――最近は同じ布団で眠るのが常になっていたりする。  自分が結婚前に異性と寝るなんて夢にも思っていなかったし、はしたないことだと教えられていたけど、これはこれで悪くないのだから困ったもの。くっつかれて温かいし、なんとも言い難い安堵感があるし。あと、ヒロはいい匂いがして好きだし、安心しきって眠っている様を見られるのも悪くない。  じっとヒロの様子を目にしていて、目元の力が抜ける感覚を覚える。  反対に胸の内がくすぐったいような感情を覚えて、なんだか落ち着かない。 「……そろそろ起きなきゃ。今日はルシアさんがお城に来るって言っていたし」  このままずっとヒロの寝顔を眺めていたい気もするけど、今日はルシアさんが首都ユズリハのお城へ来る予定になっている。  なので、ヒロが暮らしている無人島から首都ユズリハへ事前に赴き、宿で寝泊まりをしていたのだ。せっかく早くに待ち合わせの地に着いていても、約束の時間に遅れてしまっては意味がない。
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