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「えへ。ほんとビアンカって初々しいよねえ。でも、最近は遠回しなことを言っても通じるようになったし、色々と教えた甲斐があるなあ」
カラカラと愉快そうにして笑われ、ぎゅっと抱きしめられた。口振りから思うにどうにも揶揄われていたみたい。
確かにちょっと前までは、ヒロの言葉の意味が分からないことが多かった。私が疑問に首を傾げていると、頬を赤らめながらにこにこ笑って「通じないかあ」なんて言われたりもした。
今ならば、あの発言の数々が尾籠な話――、俗に言う猥談の類だったのを理解できる。
そして、そんな話を投げ掛けられると、未だに恥ずかしくて頬が熱くなってしまう。
思うに、自分を性的対象にされる羞恥なんだろう。ヒロからそういう目で見られていると思うと、どうしようもなく照れてしまうのだ。
「さて、と。それじゃあ、あと三十分くらい横になろうかな」
「ひゃわっ!!」
ぼんやりと物思いに耽っていたら、抱き締められたままで強引に引き倒された。
捲り上げたはずの掛布団まで被せられ、完全に寝の体勢に入られてしまっている。
「えええっ、ちょっと! なにしているのよっ?!」
「えへへ。三十分くらいしたら優しく声をかけて起こしてね」
などとヒロは嬉しそうに言いながら、更に「温かいなあ」とご満悦で擦り寄ってくる。
そんな様子に諦観の溜息を吐き、自由になる腕をヒロの背に回して小さな子供をあやすみたいに擦っていれば、もぞもぞとした動きが止まって静かになっていく。
掛布団の中でくっつきあっていれば確かに温かい。反対に窓から入ってくるひんやりとした外気が頭部を――、熱くなった頬を冷やしてくれて気持ちいい。
そういえば、眠る時に頭を冷やすと寝入りが良くなるとか、よく眠れるとか言われているっけ。今の状況って寝るには好条件なのかも知れない。
三十分ほどの二度寝なら、仕方ないので許してあげよう。
起床の時間としては余裕を見ているので、少し身支度を急げば朝ご飯は食べられるはず。
――と、まあ。頭の中で予定を組み直してはみたものの。
気が付けば私まで寝入ってしまい、ふたりして寝過ぎた上に約束の時間に遅れ、ルシアさんに冷ややかな目を向けられたのでした。
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