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「そもそも。――そんな僕の身体だけが目当てみたいな言い方されたんじゃ、快く同意なんてできないよ」
「気色悪いことを言うな、アホかっ!!」
話題を逸らそうと戯れを口にしたが、ハルには逆効果だったようだ。こめかみに青筋が浮かばんばかりの激昂をされた。
だがしかし、ヒロとしては“海神の烙印”を行使して、凄惨な苦労はしたくない。あの痛みと苦しみを味わうくらいなら、例え同性だろうとキスの一つや二つするのは構わないという思慮だった。
そもそもがハルと考え方が一致しないのだ。上手く患難せずに済む方法へ持っていきたいのだが――。
「――こうなったら、実力行使だね」
「は?」
言うが早いかヒロは手早くハルの肩に手を掛けたと思うと、強く壁に押し付けていた。途端に赤茶の瞳が驚愕に見開いて焦りの色を帯びるのだが――、ヒロは構わずに尚も腕に力を籠めてハルの身を逃さぬように壁へ縛り付けた。
「お、お前っ! ふざけるなよっ!」
「もうさー、この際さー。ささっと済ませちゃおうよ。男同士のチューなんて数に入らないんだしさー」
「ふざけっ! 俺にそんな趣味は無いっ!!」
「それは僕だって同じ。チューするなら柔らかくて良い匂いのする可愛い女の子がいい。――だけど今は……、ね?」
紺碧の瞳を細め、幾分か低い声音で囁かれる。口角を吊り上げた笑みを浮かし、僅かに身を屈めていき――。
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