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「――っていうことがありましたとさ」
にこやかな笑みでヒロが告げれば、亜麻色の髪に翡翠の瞳をした少女――、ビアンカの頬が引き攣りを見せていた。
ぽかんと口元を緩ませるビアンカを目にしながらも、ヒロはへらへらと笑みを浮かしたまま。
「……え。ヒロってば、ハルと……、き、きき、キス……、したの……?」
「だって、あの白い部屋って出された条件をクリアしないと出られないじゃない。致し方なし、みたいな?」
「ほ……、本当に……?」
「えへ、嘘だよん。――今日は嘘をついてもいい日だから、話を捏造してみました」
『テヘペロ』という勢いでヒロがカラカラと笑い出した途端に、ビアンカは呆気に取られて翡翠の瞳を瞬いてしまった。
正に迫真の語りだったのだ。本当にあった出来事のようにヒロが話を綴ったため、まんまと乗せられて現場を想像してしまい騙された。
そう思った瞬間に頬が熱くなってきて、つい右手に拳を握っていた。
「あっ! ビアンカ、その手はダメ! ストップストップちょっと待ってっ!!」
そこまで見境が無いのかと思った。変な想像をさせないで。
そんなビアンカの言葉がヒロの悲鳴じみた上ずった声に混じって聞こえたとか。
群島桜が綺麗に咲き誇るある日の出来事だった――。
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