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「そっか。花冠の女の子はイリエさんが好きでチョコレートを――って、ええええええっ??!」
自分で行き着いた答えに自分で驚愕してしまった。正に寝耳に水で声を荒げてしまったが、それをはしたないと思う余裕なぞなかった。
「イリエさんっ!! あの子に告白されたのっ??!」
そんな馬鹿な、そこは否定してほしい。――と心中で強く思った。
それもそのはずで、花冠の少女の正体は時渡りの術を得た未来の時代のビアンカ――だという疑惑だ――である。性格の違いがややあれど、同一人物だと思われていた。
現代の自分には想い人にヒロがいる。なのにも関わらず、まさかイリエに恋慕を抱くとは。例え自分の心変わりや酔狂だとしても信じがたい。
悪い冗談よね、と言いたげな色を湛えた翡翠の瞳が映すのは――、若干はにかんだ笑みを浮かすイリエの表情だった。
「実に率直な好意だ。しかしながら、未だ未だ子供だ。その内に夢から目覚めてしまうだろうが、今はあいつの想いに付き合ってやろうと思っている。――だが、心変わりせずに成人するようならば、将来を見据えるのも悪くはない」
「ええ、嘘でしょ……」
イリエは嘘を言っている様子もなく、満更でもなさそうである。
そうした衝撃の事実を突きつけられ、ビアンカは眩暈を覚えるほど愕然としていた。
「ふむ、少しお喋りが過ぎたな。すまないが、俺はそろそろ戻らねばならん。また変な輩に絡まれぬよう気を付け、自分だけの身ではなく英雄殿の伴侶であることを心得ることだ」
呆然としているビアンカを見やりながらも、イリエは言うや否や踵を返した。
そんな諭しが耳に入っているのかいないのか、ビアンカの翡翠の瞳は去っていくイリエの背を見送った。
「えええ……。なんで……、あの人なの……?」
晴天の霹靂というか、降って湧いた話というか。あまりにも驚いてしまい、漸くといった態で口をついた言葉。
未来の自分だと思しき花冠の少女が、どうしてイリエを選んだのかが理解できない。ヒロはどうしてしまったのだと――。
意表を突かれすぎ、解せなさすぎ。ビアンカは頭を抱えるのであった。
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