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「ふふ、ごめんなさい。本を読んでいてね、その内容と照らし合わせていたのよ」
「……本の内容? ――って、どういうこと?」
確かにビアンカの膝上には開いたままになった本――、一般大衆の興味や関心事を主に掲載する大衆雑誌が置かれている。ヒロの住む無人島に来る前に何冊か購入した内の一冊だ。
その大衆雑誌の内容と熱い視線の理由が結びつかず、ヒロは疑問符の窺える表情を浮かべつつ、縁側へと足を運んでいった。
「この本の特集で『ホクロ占い』のページがあるの。ホクロの位置によって、その人の為人が分かるんですって」
隣に座ったヒロへタオルを手渡しながらビアンカは言う。その気遣いにヒロは礼を口にしつつ、流れる汗をやや乱雑に拭って傾聴していれば、ビアンカは大衆雑誌へ再び視線を落とし、話を続けていく。
「ヒロって首の――、喉仏のところと左側の首の付け根にホクロがあるのよね」
喉仏にホクロがある人は、自己主張が極めて強い傾向にある。コミュニケーション能力も優れているとされている。
首の付け根――首筋にホクロがある場合は、金運や仕事運を高めるといわれている。物事を計画的に考え、自己管理能力がしっかりしている人が多い。
「――って書いてあってね。そうかもなあって感じたから面白くて、他にもどこかにホクロがあるのかしらって、ついつい観察してみちゃったの」
「なるほど、そういうことね」
舐めるような視線だと感じたのは、ある意味で間違えではなかったようだ。実際に舐めるようにしてホクロが無いか探られていたのだから――。
しかしながら、今日は首元や肩、腕にかけて露出しているが、下半身は黒のボトムに長ブーツで肌は一切見えていない。
ビアンカが指摘した通り、自身の首にホクロがあるのは知っている。他に鏡に写るなどして自覚している箇所といえば――、と思いつつヒロは徐にタンクトップの裾を捲り上げた。
「あとは服を脱いだりしないと見えない場所かなあ。――ほら、ここ。左側の腰骨の辺りとかなんだけど、僕のホクロってなんでか左側に集中している感じなんだよね」
履きが浅いボトムと下穿きの履き口を掴んでずらし、かなり際どく腰を露出しながら言えば、ビアンカはぎょっとした表情を浮かして頬を赤らめていた。翡翠の瞳も目のやり場に困ると語るように彷徨う始末である。
相も変わらずの初心な反応だ。裸の上半身なんて割とよく見ているだろうにと思いながら、このような好反応を見せられるとつい愉しくなってきてしまう。
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