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「ふぅん、そんな風に思ったことなかったわ。他に見えづらい場所でホクロってあるのかしら」
「えっと。あと自分じゃ見えない場所に在るホクロだと……」
「ぴゃいっ! だからわざわざ触って教えてくれなくってもいいってば!!」
「この辺りだよって触って示さないと、本で調べるにしても分からないじゃん。――なになに。ここにホクロがある場合は、情に流されやすく、健康運が高いので体に無理が利くとされています、だってさ」
因みに、ヒロが触れたのはビアンカの左側の臀部である。さり気なく撫でてみれば、ビアンカは頬を赤くして面白いほどに大げさな反応を見せた。
しかも、ホクロ占い的には『情に流されやすい』の再指摘である。どれだけ押しに弱いのだとヒロは内心で吐露しつつ、確かに押しに弱いよなと納得する部分もあった。現に下心からの身体接触も驚きつつ受け入れられているし、なんだったら流れで押し倒すような真似をしても持ち込める自信があった。――今は流石にしないけれど、などと心中で思う。
「うう、二回も情に流されやすいって結果が出てきたわね。私、そんなに流されやすいかしら……、って。ちょっと待って! なんでお尻のところにホクロがあるって、ヒロが知っているの?!」
「んふふ、なんでだろうねえ。月明りが意外と明るいせいかも?」
僕、割と夜目も利くんだよね――。上機嫌気味に継いでいくと、ビアンカは頬のみならず耳まで朱を彩っていく。どうやら言葉の真意を察したらしい。
「あは、ビアンカってば頬っぺた真っ赤だよ。――さっきは見つめられて恥ずかしい思いをさせられたけど、僕は親切心で君が自分で知らないホクロを探してあげよっかな」
「ちょ、ちょ……今は、駄目だから……っ!」
「あ、今じゃなければ良いんだね。んじゃ後でにして、先に雑誌の方を見せてもらおうっと」
言葉の揚げ足を取って返し、ビアンカの膝上に乗った大衆雑誌を手に取って目を落とす。
顔にあるホクロから、足の裏にあるホクロまで。そこにホクロが在る意味が羅列された項目を見てときおり視線を上げれば、ビアンカが顔を赤くしたままはくはくと唇を動かしている。
これは日が落ちた時間が楽しみだ。――そんな下心を内に抱き、拒否を賜らなかったことでヒロは浮かれた様子で読書としゃれ込むのだった。
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