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「双子って、どうなんですか?」
「どうって?」
「仲良しなんですか。やっぱり……」
双子は顔を見合わせると、「仲良しか、オレたち……?」、「さあ……」と話し出す。
「ぼくたちは仲良しとは言いがたいけど……なんで、そんな事が気になるの?」
「知り合いに双子がいて……。そっちは、男女なんですが。最近、上手くいってないみたいなので、気になって……」
颯真の知り合いの男女の双子というのは、光と水月の事であった。
先程まで、颯真と一緒にいたのは、行方不明になった光の振りをする水月であった。
ユニット結成の直前に行方不明になった光の身代わりをするように言われたのが、光の双子の妹である水月であった。
けれども、半年以上が経った今でも光の行方はわかっていなかった。
夏にあった遊園地の野外ステージでのライブの日に、光から電話が掛かって来たが、それ以降は何も音沙汰がなかった。
水月は光が行方不明になった理由が、「わからない」とずっと言っている。
けれどもライブの日に掛かってきた電話の中で、光は「水月の為にいなくなった」と言っていた。
「兄である自分が居続ける限り、妹の水月は目立たない」とも。
その話を聞いた時、実姉がいる颯真には、男として光の気持ちと、水月の気持ちの両方の気持ちがわかるような気がした。
時に下の兄弟というのは、上の兄弟に霞んで目立たなくなってしまう事がある。
特に上の兄弟が優秀であればあるほど。
けれども、そんな下の兄弟にとって、産まれた時から上の兄弟は「居て当たり前」の存在であった。
水月の話によると、光は子供の頃から文武に秀でており、その片鱗は颯真自身も見た事がある。
だからこそ、光と水月の周辺は光にばかり注目してしまい、同等の実力を持つ水月には気づけなかった。
一緒にユニットを組んで、真近に居る颯真はそれに気づいた。それは光も同じだった。
光は水月が持つ実力に気づいていた。
双子だからわかったのか、妹だからわかったのかはわからない。
その上で、「自分が存在している限り、水月は目立たないからと身を引いた」と、光は言っていた。
全ては水月のためなのだと。
「男女の双子って、オレたちとは違うからなあ。わからん」
「そうですか……」
その時、光の振りをした水月が入ってくる。
「ごめん。待たせて」
「大丈夫だよ。俺たちもそろそろ行こうか」
颯真が読み掛けの本をロッカーに閉まっていると、水月が双子の先輩ユニットと話す声が聞こえてくる。
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