聖なる夜の誕生日に

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「光。仕事は慣れた?」 「はい。なんとか……」 「また一緒に歌おうな」 「はい。夏の音楽番組ではお世話になりました。またよろしくお願いします」 笑顔を浮かべて双子と話す水月を盗み見ると、何故か颯真の胸が苦しくなった。 「あっ、そうだ!」 何かを思い出したように、翼がロッカーに入れている鞄の中を探る。 「今日って、光の誕生日でしょ。はい、ぼくたちからプレゼント」 そう言って翼が取り出したのは、若者に人気の靴屋の袋だった。 「わあ、ありがとうございます!」 両手で受け取った水月が袋を開けると、中からは若い男子を中心に人気のスニーカーだった。 「かっこいいですね!」 「でしょ? オレたちと色違い」 そう言って、輝が履いていたスニーカーを示してくる。 輝が黒地に赤いライン、翼が黒地に青いラインのデザインであった。 一方、水月がもらったスニーカーは、白地に緑のラインが入っていた。 「最近、白地のデザインも出たから買ってみたんだ」 「そうなんですね。ありがとうございます。嬉しいです」 スニーカーを嬉しそうに眺める水月を見ていると、「颯馬の誕生日にもちゃんと渡すからね」と心配した翼に小声で言われる。 「……ありがとうございます」 颯真の誕生日は二月なので、まだ少し先であった。その頃まで、双子の先輩は覚えているのだろうか。 水月がロッカーに貰ったばかりのスニーカーを仕舞うのを見届けると、「そろそろ行くよ」と端的に告げる。 「うん。では、失礼します」 「仕事頑張って」 手を振ってくる双子に見送らせて、二人は今日の仕事場所となる撮影スタジオに向かったのだった。 五十鈴芸能プロダクションが、有名モデルやアイドルを多数輩出できた理由の一つに、自社ビル内に撮影スタジオを持っているところにあると颯真は思う。 事務所ビルの三階は、フロア全てが撮影スタジオになっていた。 数十人が取れる大型撮影スタジオから、ファンクラブの会報誌の撮影、インターネット配信に利用できる一人用スタジオまで。 各スタジオには、照明やカメラスタンドなどの機材も揃っており、カメラも申請をすれば借りられるらしい。 「はい。それじゃあ、出島さんからお願いします」 スタッフに呼ばれて、まず颯真が最初にカメラの前に立つ。 「まず、そのまま撮ってみようか」 「はい」 ディレクターの指示に従って、颯真は立った状態でポーズを決める。
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