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最近気づいたが、颯真が撮影している時は、必ずカメラマンの後ろで、水月が目を輝かせて見てくる。
おそらく、ポージングの勉強をしているのだろう。それにしてもずっと見てくるので気恥ずかしくてならない。
いつも顔が赤くならないようにーー照れているのをバレないように、撮られなければならないのだから。
「次、茂庭さんだけ撮ります」
「はい!」
颯真と入れ違いに水月が入ってくる。
この仕事を始めたばかりの頃は、緊張でカチカチになっていたが、最近は随分と柔らかくなった。
「いいね。その笑顔」
ディレクターの言う通り、柔和な表情を浮かべる水月の顔に、緊張は微塵も感じさせられなかった。
颯真もカメラマンの後ろで親指を立てて称賛すると、ニッと笑い返されたのだった。
最後に二人で数枚撮られると、撮影は終了した。
あとから来たマネージャーから渡されたミネラルウォーターのペットボトルを飲んでいると、女性スタッフ数人が「光くん」と二人の元にやって来る。
「今日、誕生日だったよね。はい、スタッフからプレゼント」
「ありがとうございます。開けてもいいですか?」
「どうぞ」と促された水月がプレゼントを開けると、中には若者たちに人気の黒のジャケットが入っていたのだった。
「サイズは衣装さんに聞いたの。これからもっと寒くなるらしいから、良かったら着てね」
「ありがとうございます。嬉しいです」
そんな水月と女性スタッフを眺めていると、マネージャーがそっと近寄ってくる。
「颯真はプレゼントどうした?」
「用意しましたよ……。ただ、渡しづらくて」
今日が水月の誕生日だというのは、過去に水月がインタビューで話したのを覚えていた。
それで、何ヶ月も前からインターネットで調べて、何件かお店を見て回った。
水月を一番知っているのは、同じユニットで同居中の自分だという密かな自負さえあった。
水月の好みも把握していて、一番喜ばせられると思っていた。
それなのにーー。
「自信なくすな……」
スタッフから嬉しそうにプレゼントを貰う水月を見ていると、だんだん自信がなくなってくる。
自分が用意したプレゼントを水月は喜んでくれるだろうか。
気に入ってくれなかったらどうしよう。
もし、好みと違っていたらーー。
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