6人が本棚に入れています
本棚に追加
「これ、ソウ君にプレゼント」
床の上に鞄と紙袋を置くと、水月が渡してきた袋を両手で受け取る。
「試験の時に、いっつも勉強を見てくれたでしょ。代わりに料理や洗濯もやってくれて……。いつかお礼をしたいって、思っていたんだ」
袋に書かれている店名は、颯真も知らないお店であった。
「開けていい?」
「勿論!」
袋を止めるテープを剥がして、逸る気持ちのまま掌の上に袋の中身を開ける。
中から出てきたのは、銀色のチェーンがついたプレートネックレスであった。
「ネックレス?」
銀色の細長いプレートが付いたネックレスは、窓から差し込む夕陽を受けて鈍く輝いていた。
「うん。何がいいのか迷って……。ネックレスなら、気軽につけられるし、どんな洋服にも合うかなって」
プレートをひっくり返すと、日付が刻まれていた。
「この日付は?」
「何の日かわかる?」
水月や颯真の誕生日でも、何かの記念日でもない日付。
颯真は考えるが、「わからない」と首を振ったのだった。
「これは何の日?」
「IMがユニット結成の記者会見をした日だよ」
水月に言われて、ようやく颯真は思い出す。
この日、颯真は光の振りをした水月と初めて出会った。
この日から、二人はーーIMの歴史が始まったのだ。
「そうだった。ごめん。忘れてたよ」
「もう、忘れないでよ。私はずっと覚えていたんだからね」
口を尖らせる水月に、颯真は「ごめんごめん」と謝る。
「でも気を遣わなくていいのに。普段は水月が家事をしてくれるから、試験期間中くらいは代わりにやらないとって、思っただけで」
「でも、そうやってソウ君が気を遣ってくれたから勉強に集中出来たし、赤点も回避出来たんだよ」
二人が通う大学は全く違うが、互いに似た科目を履修しており、勉強を教え合っていた。
水月に勉強を教えれば、颯真自身も覚えられるので、悪い気はしなかった。
料理や洗濯といった家事も、いつも水月がやってくれるので、なかなか自分でやる機会が無かった。
けれども、こうやって水月が忙しい時に代わりに家事をすると、颯真自身も覚えられるので、全く苦でも、手間でもなかった。
最初のコメントを投稿しよう!