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「本当はソウ君の誕生日にあげようかなって思っていたけど、今日、色んな人から誕生日プレゼントを貰って幸せだから。この気持ちを分けたくって」
「水月……」
「私ね。こうして誕生日プレゼントを貰う機会って、これまでなかなか無かったんだ。いつも、光のついでみたいな扱いだったから」
水月と双子の兄の光も同じ誕生日であった。なんでも出来て、人気者の光は、昔から家族や親戚、友達から沢山プレゼントを貰っていた。
対して、妹の水月は、光のついでのようにプレゼントを貰う機会はあったが、水月だけがプレゼントを貰う機会はなかなか無かった。
「だから、先輩やスタッフさん、ファンからプレゼントを貰って、すっごく嬉しかった。この気持ちをソウ君にも分けたくなったんだ。あっ、誕生日にもちゃんとプレゼントを渡すから!」
「水月、ありがとう……。俺からも渡すものがあるんだ。待っててくれる」
水月の返事を待たずに、荷物を置いたまま部屋を出ると自室に入る。
そうして、机の上の袋を引っ掴むと、すぐに取って返したのだった。
「水月、お誕生日おめでとう。これは俺からプレゼントだよ」
「開けていい?」
颯真が頷くと、水月は受け取ったそばから袋を開封する。
緩衝材に包まれた細長い箱を取り出すと、中からはガラス製の容器に入ったピンク色の花々が出てきたのだった。
「これって?」
「ハーバリウムだよ。春をイメージしたんだって」
ハーバリウムオイルの中に浮かぶ桜、芝桜、スイートアリッサム、桃を始めとする春の花に、赤色や白色の薔薇。
桃色や白色、赤色の花々が、春らしさを感じさせていた。
「ハーバリウムなら見た目も華やかで、可愛らしいと思って。
もし、仕事関係で部屋を紹介する事になっても、あまりおかしくないかなって」
最初は女子らしいぬいぐるみや可愛いらしいバックやアクセサリーを考えた。
けれども、部屋に飾っている時に仕事関係で部屋を紹介しなければならない時、その都度片付けたり、隠したりしなければならない。
けれども、ハーバリウムなら、植物が好きと言ってしまえば、部屋に飾っていてもおかしくない。
飾り気のない、殺風景な水月の部屋も、女の子らしくなるだろう。
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