常務取締役・春日純一  仕事はせずに高待遇ってそれどんな罠?

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 静寂を(やぶ)り電話のベルが鳴りだした。  いつまでも鳴り響く音に自分が嘲笑(あざわら)われているように感じた純一は、一層苛立(いらだ)っていた。  そのうるさい音を消すために彼は受話器を取った。 「おー、春日か?」  固定電話への着信なんてどうせセールスだろう。そう思っていた純一は、その声を聞き、心の中の何かが落下していくのを感じた  せっかく気に(さわ)る音を消したというのに、今度は受話器から発せられる(にぎ)やかな声で、春日純一は心を乱される。  純一は、自分が(みじ)めになるのが嫌で、電話を切ろうとした。 「俺だ、小金持 健(こがねもち けん)だ。久しぶりにお前の声を聞きたくなって。」  電話を切ろうと受話器を耳から離したのに聞こえるほど大きな声。 「純一、新聞見た? 健ちゃん、今は一流企業の社長さんだって、すごいね。」という母の声が頭の中に(よみがえ)る。  純一は、自分の今の境遇を重ねて、ため息をついた。 「どうしたんだ。なんか声が暗いぞ。」
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