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健が純一に何があったかを知っていて聞いているような露骨なわざとらしさを感じた。知っているはずがない事は純一自身がわかっていた。
それは、つい昨日のことなのだから。
人生の敗者に勝者からの電話、落ち込んだ人間と元気いっぱいの人間、そんな罰ゲームのような状況に純一は、引き攣った笑みを浮かべる。
「会社をリストラされたんだ。」
正直に答えた純一は、次の健の言葉を予測していた。いつものような冗談半分のからかいだ。そして、それに続く冗談のマシンガントーク。
「お前ほど有能な奴を捨てるなんて、見る目のない会社だな。
そうだ。うちの会社の重役のポストが一つ空いたんだ。俺から幼馴染のきみへ、そのポストをプレゼントしよう。」
健は、純一の仕事を見たことがないはずだ。
それでも、有能などと言って、人を気持ちよくさせる人心掌握術は、健の特技だった。社長で成功というのも誰もが納得した。
「流石にその冗談は、シャレにならないぞ。」
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