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そういえば、私、健に告白されたことがある。断る時に辛かった。
今、急に思い出して、あなたに言っておかないといけないって思っちゃった。
何故だろう。」
「あー、結婚式の時に、健から聞いたよ。俺の分も幸せにしてやれってね。」
虫の知らせというものだろうか。2人は、打ち合わせたように同じ記憶を過去からたぐり寄せていた。
いよいよ、初出勤の日を迎えた。
純一は、飛行機前方のかなり広い椅子に腰掛けている。渉外担当常務取締役などという肩書きによるVIP待遇だ。
あまりの気持ち良さに寝てしまい、着陸の衝撃で目を覚ます。せっかくいい席だったから起きていて堪能するべきだったと後悔する。
車の後部座席の窓に張り付いて景色を落ち着きなく眺める姿は、重役のそれではない。
「到着いたしました。」
運転手が、運転席から降り、後部座席のドアを開ける。
重役用の高級車が空港まで迎えにきていたのには驚いたが、ドアを開けてもらえるなどドラマのワンシーンのようで笑えた。
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