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ミリアも行くと言っていた場所。『外界』の事を、私は聞きたいと前から思っていた。
「イガル伯父様、『外界』ってどんな所なんですか?」
伯父様は腕を組み直し、一呼吸入れて語り出す。
「そうだな。魔獣が生まれる場所だと思ってくれればいい。どう生まれるのか判らないが、様々な魔獣が生息している。」
「その魔獣を退治しているのが、遠征隊なんですね。」
「ああ、少しずつ安全圏を広げて、砦を築いて、守って、さらに進む。そうやって、人の住める世界を作るのが遠征隊の使命だ。」
私は、この世界の人達と自分が違うのは当然だと思った。
ただ、憧れや想いだけで、お母さんにティオに甘えていいのだろうか…私はやっぱり日本で暮らしていく方が良いのだろうか…
伯父様の手が、下を向いていた私の頭を撫でる。
「何を思っているかは判らんが、下を向く必要は無いぞ。なおちゃんとお袋が来てくれただけで、ルミナとお嬢は笑顔になる。もちろん、わしもそうだ。」
手を戻した伯父様は、笑って私を見ている。
「遠征隊も、わし達も、ルミナも、お嬢も、人が笑顔で暮らせる世界を守る為に生きている。そのわし達を笑顔にしてくれるだけで、十分過ぎる。」
私は伯父様の手の暖かさと優しさに、「はい。」と返事をした。
「そうだ。お袋はそっちの世界では、どんな感じなんだ?」
伯父様の顔は考え込んでいるような、悩んでいるような感じだった。
私は日本での生活や、お祖母ちゃんの事を話始めると、伯父様は笑顔になり、嬉しそうに私の話を聞いていた。
「お袋は、結構楽しくしていたようだな。安心した。遠征から戻ってきたらルミナから異世界に行ったと聞かされた時は、正直、どういう母親なんだと嘆いたものだ。」
伯父様の苦笑いが聞こえた。
「躾と戦い方を教えてもらった記憶しかないが、まさか、なおちゃんも同じだったとはな。」
私も笑い声が出ていた。
時刻は夕刻前、太陽が横に見え始めた頃、馬車はオルトリアスの門を抜けて、街道をゆっくりと進んで行く。
私はモカを起こして、街の風景を一緒に見ていた。
「ティオは月修院かな?」
「お嬢は、まだそうだろうな。なおちゃんが来ている事をまだ伝えてないかもしれん。」
「そっか、じゃあ。部屋で待ってればいいか。ね、モカ。」
「はいです。」
馬車は城の門をくぐり、中庭に着くと、メイド服を着た黒髪の女性が二人立っていた。
ハレさんとミレさんだと私は直ぐに判り、開いた扉から飛び出し、二人に笑顔を送る。
「おひさしぶりです。ハレさん、ミレさん。」
「おかりなさいませ。なお様。」
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