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ハレさんとミレさんが真似をして、切り分けた羊羹を口に入れると、凄い丸い目になっていた。
「どうです?」
自然と一連の流れで、緑茶を飲んだ二人のコメントを私は待っていた。
「凄く甘いです。食感も初めてですし、このお茶の渋みが丁度良く甘みを消してくれます。」
ハレさんは、期待通りの言葉で返してくれた。
ミレさんは、普段の言葉少ない感じのまま、
「甘いです。でも、美味しいです。」
そして二口目を味わうようにゆっくりと食べるミレさんの顔は、可愛い微笑みを浮かべていました。
「良かった。お祖母ちゃんが好きになった味だし、こっちの人達にも、合うと思ったんですよね。」
私はモカの羊羹を切り分けながら、自分の羊羹を口に運ぶ。
「はぁぁ…甘すぎる羊羹に緑茶って、ほんと好き。」
自分の家の居間で過ごしているような錯覚を浮かべるほど、羊羹の匂いと緑茶の香りに魅了されていた。
私は、二つ目の羊羹に手を伸ばす。
「ハレさんもミレさんも、もう一ついかかですか?」
曖昧で事務的な単語で遠慮するハレさんだったので、私は半ば強引に二つ目を二人の皿に置いた。
「これで終わり。食べ過ぎると晩御飯食べられなくなりそう。」
そう言って笑った私に釣られて、二人も笑ってくれた。
羊羹と緑茶のティータイムを終えて、のんびりとティオの帰りをモカと二人で外の景色を見ながら待っていた。
「ミリアは今どこにいるんだろうね。フィールちゃん、元気かな。」
「フィールは、あっちの方に居るです。」
モカの小さな手が指した方向は、オルトリアスを分断する巨大な壁の向こうだった。
「判るの?」
「はいです。フィールの気は知っているので、届く範囲なら、離れていても判るのです。」
「そうなんだ。じゃあ、どれくらいの距離まで届くの?」
モカがじっとしている。考えているのかな。
「判んないです。」
たぶん、距離感っていうのが無いのだと私は思った。モカ達にとってそれは必要のない事なんだろうと。
「まあ、モカがフィールちゃんを感じているって事は、フィールちゃんもモカを感じているって事になるのよね。」
「はいです。」
ミリアにどう連絡をしようか考えていたけど、その心配が要らなくなって私は笑みをモカに見せる。
「それじゃあ、すぐにでも、会いに来てくれるね。」
空は茜色に染まり始め、私は中庭を眺めながらティオの姿を探していた。
「あれ、ティオとハミルさんかな?」
1組の男女が中庭の庭園から来るのが見えたけど、小さくて確認は出来なかった。
「やっぱり、ここからじゃ無理があるね。」
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