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私は窓からモカがいるベットに座り、体を倒す。
「もうそろそろだし、落ち着いて待つことにした。」
半分は独り言の台詞を呟いて、天井を見る私に、
「はいです。」
モカの返事に私は少し可笑しくなり、小さく笑い声をだしていた。
少しして、扉を叩く音とともにティオが勢いよく入って来た。
「なおぉ~。おかえり~!」
変わらないティオを見た私は、安心と嬉しさで、心がふわっと暖かくなった気がした。
「ただいま、ティオ。」
ソファに座り、私はカバンから、ロレンおばさんのクッキーをティオに渡す。
「はいこれ、おば様から。」
ティオは「ありがと。」と、言って受け取り、私のカバンに興味津々な顔を見せている。
私は知らないふりをして、ティオの表情を楽しむ。
「ねぇ、なお。その袋って何が入ってるの?」
「んっふふっ。」
私は、ゆっくりとカバンからお菓子をテーブルに数個並べる。
「あっちのお菓子。和菓子って言って、私が住んでいる国で生まれたお菓子なの。」
食事前という事で一つだけ食べることに決めて、ティオが選んだのはどら焼きだった。
さっき作り方を教えたハレさんに緑茶を注いでもらい、私はどら焼きのビニールの包装を取り、皿の上に置いた。
「その包装…何でできてるの?」
「これ? えっとね、正式な名前は知らないんだけど、ビニールって呼んでる。材料はプラスティックっていう物で、こっちの世界には無い物だと思う。」
ティオは透明な紙を手に取って色々な角度から見る。
「中が見えるって結構便利ね。」
「それだけじゃないのよ。水も空気も通さないし、破れにくいの。」
ティオが包装袋を引っ張っている。
「ん~っ! えっ?! う~っ! はぁ~…なにこれ…」
私は笑いそうになりながら、
「袋はいいから、どら焼き食べようよ。」
「そうね…こっちがメインだったわ。」
私は我慢していた笑い声を噴出してしまう。
ティオは小豆の味に衝撃を受け、緑茶の渋みに驚き、でも凄く嬉しそうに味わっていた。
私とモカも、一緒に2回目のティータイムを楽しく過ごした。
「お母さんは?」
私はティオに尋ねる。
「公務室じゃないかな。そろそろ終わる頃だとおもうけど。」
それから、お母さんの普段の仕事は公務室で街の役所からの書類と遠征隊などからの報告書の閲覧で、稀にある謁見に出たり、政の行事に出たりするとティオに教えて貰う。
「夕食まで時間あるし、先にお風呂いきましょ。」
ティオの笑顔からの提案に私は素直に従った。もちろん、ティオの笑顔の理由を知っているから。
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