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「モカ、お風呂いってくるから待っててね。」
大きな浴槽とティオとのお風呂が久しぶりだった私は、少しはしゃいでしまい、湯疲れしそうになっていた。
浴場から脱衣部屋に出ると見慣れた光景の、衣装ワゴンを開けたハレさんとミレさんが立っていた。
私は部屋着用のドレスをハレさんの着付けで着る。
「あれ? この前には無かった服ですね。」
乳白色のシンプルで大人びたワンピースのドレス。上着も上品な感じで、衣装ワゴンの中も全部、前には無かった服ばかりだった。
「以前のはティオ様用だったのですが、この衣装ワゴンは全てなお様のために用意させていただきました。」
私は嬉しさを抑えながら、ティオにドレス姿を見せる。
「どう、似合う?」
ティオの服は以前と変わらない可愛いドレスで、比べて思ったのが、私のはお母さんのと似ていると思った。
「似合ってるわよ。お母様が作らせたんだからね。」
ティオの、たぶん拗ねているのだと判るその表情から出た言葉は不機嫌な声だった。
「何で拗ねてるの?」
「私もそういうドレスが着たいって思ったからよ。」
悔しさと羨ましさが混じったティオに、私は微笑みを返し、
「ティオも似合うと思うけど、可愛いドレスは今だけだし、私は今のティオの姿も良いと思うわよ。」
「んぅうぅ~。もう…そうなんだけどね。」
少し機嫌が良くなったみたいで、私の腕を引っ張って部屋に戻る仕草をみせる。
私の部屋に戻った私とティオは夕食の時間まで、ゆったりとした時間の中で尽きない会話を楽しんだ。その間、モカはいつも通りにベットで寝ていた。
「なお様、ルミナ様が御呼びでございます。お部屋までいらしてくださいとのことです。」
私は、ティオとの会話を止めてソファから立ち上がる。
「えっと、私一人で?」
「それは伺ってはいませんので、申し訳ございません。」
「いえ、大丈夫ですよ。それじゃあ、ちょっと行ってくるね。」
「判ったわ。なら私も一度部屋に戻るわね。」
私は寝ているモカをそのままにして、この国の王妃で、お母さんの部屋に向かった。
ハレさんがルミナ王妃の部屋の扉を少し開ける。
「ルミナ様、なお様をお連れしました。」
「ありがとう。部屋に通してください。」
私は、ハレさんが押し開けた扉を通ってルミナ王妃の部屋に入る。と、すぐに扉は閉められた。
「おかえりなさい。なお。」
王妃としてじゃない、その笑みと言葉で私は、
「ただいま。お母さん。」
手を広げた母に、私は包まれるようにに抱きしめられる。
数秒の抱擁で心の中まで温かくなり、絶対的な安心感に私は満たされていた。
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