ただいま

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 お母さんの話は、消えた城の話だった。  オルトリアスの東にある水の都市『リエムリム』からほぼ南の海上に、岩礁の上に城だけの島があり、その管理を水の巫女達が行っていた。いつ、誰が、何の為にその城を建てたのか、まったくの不明で、発見された数百年前からの謎になっている。  なぜ謎のままなのか。  それは、結界の魔法が施されていて、城内部に誰も入る事は出来なかったからだった。  その話を聞いていたリナは特に驚く事もなく、 「それ、私の城よ。」 (はい? えっ?! そうなの!?)  テーブルを囲んでいる中で、驚いているのは、私とティオだけだった。 「はやり、そうでしたか。その海上にあった城は、『天空城』なのですね。」 「ええ、そうです。私があの場所に安置しました。」 (安置?) 「消えたのが今から2ヶ月ほど前、なにか心当たりはありますか?」  お母さんの問いにリナは少し考えていた。 「あの城には4人のホムンクルスが眠っています。封印する形で起きる事は無いのですが…消えたとなると理由は判りませんが、『天空城』としての機能を発動していると考えて良いと思います。」 「そうですか。それでは、その『天空城』が国民達に被害を出す可能性はありますか?」  リナはもう一度考え込み、 「消えた後に、誰も見てはいないのですよね。」 「はい。そのような報告は受けていません。」 「なら、私が居ないその城は、外界を周回する軌道に居ると思いますので大丈夫だと思いますが…」  リナの表情が少し寂びそうに見えた。 (リナ、大丈夫?) 《なお、心配しなくても大丈夫よ。》 (いや、そうじゃなくて、その4人の事が気になってるんだよね?) 《そうね。…彼女達が無事でいて欲しいと願っています。》 (探しに行けないの?) 《今のわたしだと、ちょっと時間的にも、安全面でも、無理だと思う。》 (そうなんだ…なんとかならないのかな。)  私たちの会話にお母さんの声が入る。 「リナさん。天空城の居場所は判りますか?」 「自動操舵で動いているなら、アルズ山を中心に回っているはずです。それ以外だとお手上げです。」 「今回の滞在期間で確認するには無理がありそうですね。」 「そうね。以前の私だったら、3日でアルズ山まで行けましたが、なおの身の安全が保障出来ないですね。」 (じゃあ、誰か護衛をしてもらえば、行けるの?) 《そこまでして今行く必要があることじゃないし、そこに居ないかもしれないし。》 (ちょっと私に代わってくれる。)
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