ただいま

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 なおの姿に戻った私は、いつものようにお祖母ちゃんへと手を合わせる。 「お祖母ちゃん、リナと一緒に天空城を探しに行ってくれないかな。判らないまま戻るのって嫌だし…リナの気持ち、聞いてあげてっ、お願い。」  お祖母ちゃんは少し考え込む仕草になる。 「リナさんに代わってくれるかい。」  私は、リナと代わる。 「リナさん、天空城まで3日で行くには、何が必要だい?」 「なおの時の護衛と移動手段があれば、行けます。」  お祖母ちゃんは、また静かに考え込んでいる。 「そうだね。火の娘はどうだろうね。」  リナの「んぅ~ん」と、うなるような声が静かになり、私達は次の言葉を待っていた。 「彼女なら足手纏いにはならないと思うけど、来てくれるかしら。」  リナの言葉にお母さんが、 「明日、ミリアさんに頼んでみましょう。それでだめだったらお母様、お願いできますか?」 「ああ、仕方がないね。その時は私が面倒みるよ。」  部屋に戻った私は、直ぐにベットに入りリナの所に来ていた。いつもの就寝前の修練をさっさと終えて、リナに『天空城』の事を聞く。  天空城は古代魔法の永続系魔法を使って城を飛行させている。封印魔法や結界と同じだとリナは言った。  リナはその城に住んでいた4姉妹をホムンクルスとして蘇らせ、城の管理と自身の世話係のメイドとして暮らしていた。  ホムンクルスとして生まれた彼女たちはゴーレムとしての性質も合わさっていたため、老いること無く、リナの死後も活動する事が出来ると。  だからリナは、彼女達を残して逝く事が心残りだったので、命が尽きた時の命令を事前に与えていた。  城を大陸から見えない海上に下ろし、意識を封印する棺で眠りに就くようにと。 「誰かが、城の結界を解いたのかな?」 「可能性としては否定出来ないけど、あの結界を解こうとすると防衛機能が働くはずだから。」  リナは記憶を辿るように目を閉じている。 「それさえも、突破したとしたら、ちょっと心配ね。」 「そっか…急がないとか。」 「でも明日の出発は無理だとおもうから、今は願うしかないわね。」  私とリナはベットに移り、静かに目を閉じた。  今は祈ることしか出来ないと理解しながら、私は眠れない気持ちを抑える。  不安を抱いたままのリナの為に何かをしたいと考え、何も出来ないと思い知らされる。 「なお、ありがとう。その気持ちが今は嬉しいから、一緒に寝てくれるかな。」  視線を私に向けたリナが小さく笑っている。 「うん。」  私は、その笑顔に応えるように、ゆっくりと眠りの中に落ちていった。
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