運命の赤い縄

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「お前たちに、運命の赤い縄を授けよう」  雨どいから引っこ抜かれた白いタヌキは、庭に並んだ俺と凪咲(なぎさ)にそうのたまった。 「人に助けてもらって他に言うことねぇのかよ」  道徳的指導をした俺の横っ腹に、すかさず隣からツッコミが入る。凪咲は俺に肘鉄を食らわしてから、タヌキに疑問を投げかけた。 「赤い……?」  いやいやそこかよ。「タヌキがしゃべった!」とか「なんでそんな目玉のおやじみたいな声なの?」とかそういうのじゃねぇのかよ。  幼なじみの順応性の高さに唖然とする俺をよそに、タヌキはと頷く。すると俺たちの前に突然二本の赤い縄が現れ、一本が俺の、もう一本は凪咲の足首に巻きついた。反対の端は両方とも、雑草()い茂る庭土の上に落ちている。 「この縄で結ばれた者同士は、必ず添い遂げる運命なのじゃ! 他の者には見えぬから安心して励むがよいぞ!」  白いタヌキは高らかに笑い、わざわざ 「どろん!」  と言ってから走って逃げた。 「まぁ、そうだよな。どろん! で消えられるくらいなら雨どいに(はま)んねぇよな」  俺は生垣の下を抜けていく白い毛玉を見送り、シャツの襟をつまんでパタパタと風を起こした。 「ねぇ、それよりこの縄……本物?」  凪咲は赤い縄の結びついた足を振り、十五センチ下から俺を見上げている。 「本物? っつうかさぁ、これなんかいろいろ間違ってんだろ。何だよ縄とか足首とか」 「普通は赤いだし、左手の小指についてるんじゃなかったっけ?」 「のに糸な」 「思っきし見えてるけどね」  凪咲が端を掴んで持ち上げると、赤い縄はちょうど彼女の身長ほどの長さだった。夏の雑草に紛れた俺の縄も、同じくらいはありそうだ。
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