提央祭

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 ―――キーンコーンカーンコーン 4月10日の朝。 提央高校のチャイムが鳴る。 1年B組、新入生のクラス。 このクラスでは入学早々転校生がやってくるらしい。 「それでは転校生を紹介する。 さあ入っておいで」 眼鏡に白髪の中年の担任がそう合図すると、ガラッと扉が開いた。 転校生は、めちゃくちゃ可愛い女の子だった。 身長は低めで、小顔で、ぱっちりした瞳に、薄桃色の形の良い唇。 完璧に整った顔立ち。 肩まで届くくらいのふわふわな栗色の髪。 そして、胸がでかい。 でかいだけじゃない。形もいい。張りもある。 ブラウスのボタンが少し引っぱられはち切れそうなくらい存在を主張している。 触れたことがある男はまだいないが、間違いなく柔らかい。 誰が見てもわかる、発育の良い豊満な胸をお持ちの女の子。 さらにスタイルもいい。 足もスラッと長くて、スカートも短めで白い太ももが眩しい。 太くもなく細くもない絶妙なラインを維持したパーフェクトボディ。 そのグラビアアイドル顔負けの身体は、男子の視線を一瞬にして釘付けにした。 性的な視線を向けずにはいられなかった。 これだけ容姿端麗なのに、女の子の態度は控えめで、恥ずかしそうにもじもじしていて。 転校初日だから緊張していた。 「え…えっと… 和平町から来ました、北条(ほうじょう)結衣(ゆい)です。 よっ…よろしくお願いします!」 北条結衣と名乗った巨乳美少女は、黒板の前で挨拶してペコッとお辞儀した。 礼儀正しい。真面目で性格もいい。 和平町という平和な町で生まれ、平凡ではあるがそれなりに恵まれた家庭で育ち、 胸だけじゃなく人格も16歳とは思えない立派な女の子に成長した。 汚い欲望に塗れたこの町とは対極の存在。掃き溜めに鶴である。 クラスメイトの男子は皆刹那も結衣から視線を外すことはなくじっと見つめる。 可愛すぎて見惚れている。「可愛い…」と小声でつぶやく男子もいる。一目惚れしてしまった男子も少なくない。 女子ですら感心して見入ってしまうほどの美貌だった。 結衣はその視線の圧力に圧されてたじろぐ。 挨拶したのになかなか返事してもらえずただ見つめられるだけで静かな空気が流れる。 みんな自分に見惚れているだけなんて夢にも思ってない結衣は、この重い空気に耐えられなくなってきた。  (気まずい。怖い。 私、このクラスに馴染めるのだろうか) 結衣は不安で震えてきた。 見惚れてボーッとしていたクラスメイトたちはハッと正気を取り戻し、暖かい拍手で結衣を歓迎した。 「こちらこそよろしく!」 「1年B組にようこそ北条さん!」 歓迎してもらえたのがわかって、結衣はホッと胸を撫で下ろした。 「北条結衣ちゃんっていうんだ? あたし糸原(いとはら)美保(みほ)!よろしくね」 隣の席になった女子が気さくに声をかけてきてくれた。 黒髪セミロング、おでこを出した普通の女子だった。 「う…うん!よろしくね!」 結衣は嬉しかった。 クラスのみんないい人そうでよかった。 早くも友達ができそうで、張りつめてた緊張がほぐれていくのを感じた。 日本一治安が悪い町。この学校も不良が非常に多く暴力沙汰も日常茶飯事の底辺校。 しかし結衣は比較的まともなクラスに入ることができた。 運が良かった。 まあ入学したばかりで大人しくしてるだけかもしれないが。
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