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じっと熱っぽい視線で僕を見つめる彼女から目をそらす事もできず、ごくりと生唾を飲み込んだ。動揺する胸の内まで、見透かされているような気がした。
「言ったじゃないですか。せっかくつまらないおもちゃだったって気づいたんだから、もっと素敵な他のおもちゃで遊べばいいって。今目の前にあるおもちゃが欲しいとは思えませんか?」
ぞっとするほど妖艶な笑みに、心臓がどくんと跳ねる。
彼女は僕の手を取り、立ち上がった。僕も彼女に従う。
「……行きましょう」
「どこに?」
「私の家へ。こんなところじゃなくて、もっと静かな場所でゆっくりと話しませんか?」
突然の誘いに戸惑いつつも、僕は慌てて頷いた。
まだ名前も知らないけれど、ずっと僕を想っていてくれたという彼女は、沙耶なんかよりもよっぽど魅力的に思えた。
何よりもこの安心感。
僕の心に寄り添ってくれようとする優しい気持ちが伝わってくる。
どうして今まで気づかなかったんだろう。
彼女はずっと僕を見ていてくれたというのに。
彼女に手を引かれるまま、僕は砂の上を歩き出した。
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