1 猫が死んだ秋

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1 猫が死んだ秋

 今日、ミアが死にました。覚えていますよね、二人で飼い始めた茶色のキジトラ猫。飼い始めて六年目の秋となる今日、私を残して旅立ってしまいました。  聿郎(いつろう)さんも御存じの通り、私は人付き合いが苦手です。今でも考えてしまうのですが、どうして聿郎さんは私のような女を選んだのか不思議でなりません。とは言いつつも、未だに聿郎さんの事は好きでなりません。  残念ながら今は聿郎さんと離れています。いつまでもくだらない事を考えている私への罰なのかもしれませんね。  余談が過ぎてしまいましたね。ミアの話でしたが……まあ、可愛く温かな日々を彼女は与えてくれてとても感謝しています。  本当ならもう一匹か二匹程飼って仲間を増やしてあげたかったと少しばかり後悔しています。聿郎さんと別れて以降、ミアは大切な心の支えでした。そのせいでしょうか、他に猫を飼おうとしなかったのは。  猫に対しても私は本当に気の利かない女だと思います。  残暑もいよいよ終わりを迎え、街路樹のイチョウが葉を黄に染める季節になってしまいました。聿郎さんと別れたのもこんな時でしたね。  秋って何なのでしょう。気温は殆ど春と変わらないのに匂いも違いますし、どことなく寂しい雰囲気です。……毎年恒例なのですが。  聿郎さんは秋が好きだと仰ってましたね。今なら言えるのですが、私は秋があまり好きではありません。  理由の一つに”聿郎さんと別れた季節”というのも御座います。ですが、体質的にあまり好きではありません。こんな言い方をすると、持病やアレルギーがあるの? と、思われるかもしれませんが、そうではありません。“体質”と書くから変な誤解を招きそうですね。“気持ち的”な問題です。  少し文章がくどくなってしまいましたね。手紙というのも苦手です。文章が丁寧過ぎて自分ではなく、まさしく別人になります。それに今はLINEなど、短文で相手に想いを伝える方法もありますけど、聿郎さんと繋がれないのでしたら文明の利器ともいえるパソコンやスマホは役に立ちません。  とはいえ、こんなくどい手紙なども意味はないのでしょうが、こちらの方がまだ辛うじて繋がれている感じが致します。  聿郎さんに届く事を願います。
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