やっぱり……。  4.一夜明けて

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 * * *  仕事が終わって。  亜南くんと公園の中を歩いている。  亜南くんに仕事が終わったら時間があるかと訊いたら『あります』と返答してくれた。  場所は公園でということになり、今に至る。 「……あの……亜南くん……。  今日、時間を作ってもらったのは……」 「すみません、  俺、話したいことがあるんですけど、先にいいですか」  勇気を出して話そうとしたとき。  亜南くんが話し始めた。 「……う……うん。  亜南くんが話したいことって……?」  ひとまず亜南くんの話を聞こう。 「俺、今月いっぱいで辞めさせてもらいたくて。  これ、退職願です」  えっ⁉ 「どっ……どうしたのっ、急に⁉  何かあったの⁉」  あまりにも突然のことで。  そう訊くのが精一杯だった。 「何もないです。  親の仕事の都合です」 「親御さんの……?」 「はい。  親は会社を経営していて、  俺も経営のことを学べと言われているんです」  そうだったんだ。  亜南くんの親御さんは会社経営を。 「それで空いている時間は経営のことを学ぶことに」  そうなんだ。 「そうなんだね。  寂しくなるけど、そういうことが理由なら……」  そう言って亜南くんから退職願を受け取った。 「だから。  俺、遥稀さんのこと……諦めます」  …………。  え……?  今、なんて……。
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