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逃亡の果てに
実は、帆波は私達から逃げ切れないと悟り、自ら死神を訪ねたのだった。
「萌務さんを自分勝手の想いから、殺してしまい申し訳ないことをしました」
「大人しく、死神様に連行されますので、せめて地獄に落ちるその前に萌霧さんに謝らせて下さい」
「彼女は、本当に優しい女性で、こんな私にも優しく接してくれました」
と涙ぐみながら死神に申し出た。
帆波を不憫に思いその申し出を受け入れた死神は、地獄行きを受け入れた霊の証として彼女の霊波を止めた。
つまり、帆波の霊は霊力を完全に失ったのだ。
死神は帆波の霊波を止めると同時に私に連絡をよこし、私の事務所で会うことになった。
「帆波は捕まったのでもう彼女を追う必要は無いよ、大変世話をかけたね」
「それから彼女が萌霧さんに地獄に落ちる前に謝罪したいと言っているが、帆波を萌霧さんに会わせてやってくれないか?」
「私からもお願いする!」
「死神、どうしてそこまで帆波に肩入れをするの?」
と私が尋ねると
「帆波の霊から人が持つあらゆる業が消えた、残るのは申し訳ないという謝罪の念だけだった」
「私には、誰も嘘をつけない、霊の嘘を見破るのも死神の仕事だからね」
「それに叶えられない恋の辛さ、悲しさは、私にも理解できる」
「霊界に案内する女性の霊に、私も密かに恋した事があるからね」
と死神が穏やかに言う。
「そう、あなたがそこまで言うなら、萌霧さんに帆波を会わせましょう」
「ところで帆波は、今何処にいるの?」
死神が、右手の指をピチンと鳴らすと、空間から人が入れる位の大きさのku黒いカプセルが現れる。
死神が、カプセルを開くと、白く光るの人型をした発光体が現れる。
その白い人型がしゃべり始める、
「私、帆波です、今回は大変お騒がせをしました」
「どんなに謝っても、謝り足りないけれど、萌霧さんに謝りたいのです」
「帆波さんがあなたに謝りたいと言ってるの、萌霧さん、こちらにいらっしゃい」
と私が萌霧に語りかけると、
青白い人型が、すーっと現れる、萌霧だ。
すると白い人型が萌霧にすり寄って行く。
「萌霧さん、帆波です」
「あなたには優しくしてもらったのにあなたの人生を奪ってしまって、本当にごめんなさい!」
「地獄に落ちる前に、萌霧さんに謝りたかったの、どんなに謝っても許してもらえないでしょうけれど」
と床にうずくまり泣き崩れる帆波。
最初は帆波を睨みつけていた萌霧だったが、穏やかに帆波に話だす。
「あなたのその言葉を聞いて私は心安らかに霊界へ旅立てます」
「帆波さん、最後に握手しましょう」
と萌霧が微笑みながら、帆波に右手を差し出す。
泣き笑いしながら萌霧と握手する帆波。
握り合う二人の手から眩い光が放たれ、ベイジュ色に輝く。
死神が、
「もう思い残すないね、そろそろ地獄へ行こうか、帆波」
と言うと、帆波は黒いカプセルに入り、死神が指をピチンと鳴らすとすっとカプセルが消える。
「それでは、帆波を地獄にこれから連れて行くよ」
「萌霧さん、この世に留まれる猶予期間が過ぎたら、また迎えに来るからね」
と私にペコリとお辞儀をして、死神は去った。
「これで、今回の事件は解決ね」
「今度、ゆっくり死神の恋の話を聞かなきゃね」
と私が姫都美にウインクする。
これからも私は、死神と連携して悪意ある霊から、この世を守り抜いてゆくつもりだ。
了
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