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座っているのもなんだから
どのくらい流されたのだろうか。何度か太陽と月が沈んでは昇った。空腹と渇きにすっかり参ってしまった僕は、やがてどこかの島の近くに流されてしまう。
砂浜ではハーフパンツに派手な模様のシャツを着た、浅黒い肌の住民が僕を見つける。
「またポンコツが流れてきたぞ!」
その声で、やはり派手な模様のシャツを着た浅黒い肌の住民たちが集まってボートを出す。ボートの上の住民たちは、浮き輪に縛りつけられたまま海に浮かぶ僕を砂浜に引き上げる。
「ありゃ、これは人間だな。めずらしい」
砂浜に集まって来た住民たちは、ボロボロの僕の姿を見て、水やパンのかけらを持って来る。僕はむさぼるようにパンと水を口に入れる。
「いやあ、まさか人間が流れて来るなんて思ってもいなかったよ」
住民のひとりがそう言った。他の住民たちもうなずく。僕は住民たちのパンや水でなんとか飢えと渇きを満たすことができた。ようやく助かった。住民たちに感謝するしかない。
「まあ、いつまでも砂浜に座っているのもなんだから、こっちに来たらどうだ」
空腹と飢えを満たした僕を住民がそう言った。海を漂っていた僕を最初に見つけた住民だ。ハーフパンツに派手な模様のシャツの男のあとを、僕はよろよろと歩いてゆく。他の住民も一緒について来る。
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