オンボロの建物

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オンボロの建物

 おそらくここは南の方にある島なのだろう。太陽の日差しも強く、湿り気を帯びた空気も生暖かい。砂浜の奥に生える植物は緑の濃い葉をめいっぱい茂らせ、原色の花を咲かせている。  そんな植物が鬱蒼と茂る森の中をしばらく歩くと、男はオンボロの建物に僕を案内する。砂浜からさほど離れていない、緑の濃い植物に囲まれた場所。トタンでできた壁や屋根。  住民に案内された僕は、そんな粗末な建物に足を踏み入れる。他の住民も一緒に建物に入って来る。島の外から来た人間がめずらしいのだろう。  建物の中には、壊れた家具や家電製品が数えきれないほど詰め込まれていた。タンスや時計、本棚にテーブルと椅子……。さらには冷蔵庫、エアコン、テレビ、電気ポット、ヒーター、携帯電話にスマートホン……。  建物の真ん中には修理するための作業台。ドリルやネジまわし、半田ごてが転がり、ネジや釘、電子部品や配線もいくつも載っている。作業台のそばには古い旋盤や電動糸ノコギリの機械。そして、板切れや金属部品も数え切れないほど、部屋の奥にまとめて置いてある。
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