リサイクルの島ってところだな

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リサイクルの島ってところだな

「この島にはな、いろんなところからいろんなものが流れて来るんだ。海流の影響で。ほら、不法投棄ってやつ。海の向こうで海に不法投棄されたポンコツの冷蔵庫やらスマホやらタンスが、この島に流れ着くんだよ」  住民の口にした『不法投棄』という言葉が聞こえた瞬間、僕の胸は大きく揺れた。僕もまさに不法投棄のせいで、こんなところにまで流れ着いたからだ。  きっと僕の流したテレビもこの島に。そういえば、僕の家にやって来た一家も肌が浅黒かった。この島の住民なのだろうか。そんな考えが過ぎると、ますます自分のした行為が呪わしく思われて来た。 「ここでは海からこの島に流れ着いたポンコツを修理して、それをリサイクル商品として売ってる。修理できないものは部品や材料にバラバラに分解して、それもまた業者に売ってるんだ。  今ではスマホから貴重な重金属も採れる。金とかプラチナみたいなね。それが結構なカネになるんだよ。  ま、言ってみりゃ、ここはリサイクルの島ってところだな」  浅黒い顔の住民はそう言って自慢げに大きく笑った。印象的な白い歯を丸出しにして。他の住民も僕のうしろで愉快に笑った。南国特有の素朴な笑い方で。  住民たちにとって、この島がリサイクルの島というのがよほど自慢なのだろう。それで僕をここに案内したのだ。僕は素朴な住民たちに笑い返す。
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