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ちょこっと修理するだけだ
そんなふうにリサイクルしたものや、あるいは部品や貴重な金属を売って生活しているのなら、島の外の人々とも交流があるはずだ。それならば、ひととおりこの島を案内してもらったら帰り道をたずねよう。
僕がそんなことを考えていると、僕をここに連れて来た住民が言った。
「さて、さっそくこのポンコツを修理してみるか」
その言葉が合図となり、なぜか僕は他の住民たちに羽交い締めにされる。僕はわけもわからずに修理されるべきポンコツはどこにあるのだろうと、作業台のまわりを目で探る。
「ポンコツの人間を修理するなんて初めてだけどま。なあに、修理できなければ、バラバラの部品にして売っちゃえばいいだけだから」
修理されるべきポンコツが何か気づいた僕は、バタバタと手足を動かそうと必死で抵抗する。死に物ぐるいで。けれど、住民たちの力強い腕が何本も僕の体を押さえつけているので、ほとんど何もできない。
「なあに、壊れたところをちょこっと修理するだけだ」
住民たちの手で強く押さえつけられた僕の体には、鎖がぐるぐると巻きつけられてしまう。僕はいよいよ身動きが取れなくない。
それでも僕は必死で体をよじらせ、手足を暴れさせて抵抗しようとするが、何重にも巻きつけられた冷たい鎖が僕の抵抗を冷たく拒む。
その瞬間、僕は僕の家にやって来たあの一家を思い出す。浅黒い肌、体のいたるところに巻きついた包帯や貼りつけられたガーゼ。一家の抱えていた怒りと憤りと悲しみ。そんな一家の姿が僕の頭をよぎる。
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