これは立派な労働事故

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これは立派な労働事故

 僕がわけもわからずに立ちすくんでいると、横から保険屋が割り込んでくる。 「この人はですね、海に潜って漁をしているとき、浮き袋に縛りつけられたテレビが体に直撃したんですよ。これは立派な労働事故というわけでありまして、漁協の方から派遣された私どもが調査に乗り出したというわけなんです。  それで調査の結果、浮き袋に縛りつけられていた壊れたテレビは、どうやらあなたのものだと判明したというわけなんです」  保険屋の説明に僕は愕然とする。怒りに任せて海に流したテレビがこんなことをしでかしてしまった……。 「そういうことでしたか。それはまったく申し訳ありません」  思いもよらぬ事態に、僕は漁師に素直に謝る。けれども、漁師の怒りは収まらない。
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